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名前がなくても愛してる 5
紘弥の綺麗な身体を隅々まで愛撫して、それだけで汗ばんで火照り始めた肌に愛しさを募らせながら、恥じらうように閉じた入り口を丁寧に濡らした。
指でローションをなじませるだけで切なげな声を上げる紘弥が可愛くて、ゆっくりと指を差し込むと、脚を震わせて感じてくれる。
「……ほんと……可愛い……」
呟きながら白い胸に口づけると、紘弥の手が浩一の肩にかかって、顔を上げれば濡れた瞳と目が合った。
「浩一さん……」
名前を呼ばれただけでキスをねだられているのがわかって、唇を合わせながら指の腹で紘弥の内側を愛撫した。敏感な彼はそれにも身体で応えてくれて、こんなに愛し甲斐のある子はいないなと思う。
中の感触を堪能しながら甘い口づけをして、唇を離す頃には、紘弥は目尻を涙に濡らしていた。
その顔を見つめながら二本目の指を飲ませると、眉根が寄って泣くような声が漏れる。さらに抜き差ししてやれば、紘弥の喉からまるでもう交わっているかのような喘ぎが漏れた。
「すごい感じてくれてる……。嬉しいよ……」
呟いて、濡れた目尻に口づけると、紘弥は息を乱しながら浩一の首に腕を絡めて、切れ切れに言った。
「お、おれ……、も……気持ちよくてだめです……」
その瞳が本当に溶けそうになっていて、浩一は目を細めた。
「このまま指でイカせていい?」
紘弥はふるふると首を振った。
「浩一さんが……欲しいです……」
囁くような甘い声でねだられて、浩一は黙ってキスで返事をした。彼に甘えられるのも欲しがられるのも、不思議なほど浩一の心を温めることしかしなかった。
紘弥の求めるままに、彼の濡れた入り口にペニスをあてがう。そしてその表情をよく見ながら、ゆっくりと熱を押し込んだ。
「あっ……あぁっ……あ……っ!」
すべて飲ませた瞬間に、紘弥は喉を反らせて身を震わせた。内側がきつく締め上げてきて、浩一も息を詰める。
一瞬ぼやけた視界の中で、紘弥が白濁した熱を散らしたのが見えた。
荒く息をする紘弥の頬を撫で、浩一はその唇についばむようなキスをして笑った。あまりに素直に浩一を感じてくれる彼が、愛しくてたまらなかった。
ちゅ、と音を立てて鼻先にも口づけると、紘弥は恥じらうような顔をして、遠慮がちにより深い口づけを求めてきた。それを拒む頭などあるはずもなく、繋がったまま紘弥の満足するまで口づけを深めた。
「…………いったん抜こうか?」
紘弥の甘い吐息のかかる距離でそう訊くと、紘弥はわずかにかぶりを振って言った。
「……や……離れないでください…………」
その声がすがるような色を帯びていて、そんなふうに乞われたらいっそう愛しくなってしまうと、浩一は少しばかり苦笑する。
「……そんなこと言われたら、俺、ほんとに離れられなくなっちゃうよ……」
紘弥の頬を撫ぜながら言うと、紘弥は浩一の頭を抱くように腕を回してきた。
「……今は、おれ、ぜんぶ浩一さんのだから……おれのこと離さないで……好きにして……」
おねがい、と囁いた声は、やはりすがるように切ない響きを持っていて、浩一はもう何も言えなくなって、ただ紘弥の快感の火種を探り、彼を甘やかすことしか考えられなくなってしまった。
紘弥は浩一のすべてに感じると言わんばかりに喘いで、その内側は浩一の精をせがむように始終浩一自身に吸い付いてきた。
紘弥のすべてが浩一を喜ばせ、満たすために存在しているかのように思われたし、浩一もまた彼に尽くすためだけに肉体を得たような気持ちで、時など忘れてひたすらに交わった。
散々に喘いだ紘弥は、水を飲もうとして咳き込んだ。
浩一は慌ててその背中をさする。
「大丈夫? ゆっくりでいいよ」
ごめんなさい、と掠れた声で言う紘弥に、浩一は苦笑する。あんなに求めてくれて、受け入れてくれて、浩一の中には紘弥に対する感謝の念しかないというのに、彼は変わらず浩一に遠慮することを忘れなかった。
落ち着いたらしい紘弥が喉を潤し、浩一の誘うままに腕の中に収まってきて、浩一はその温もりを抱き寄せて深く息をついた。
「幸せすぎて言葉が見つからないよ……」
そう言いながら紘弥のこめかみに口づけると、紘弥ははにかみながら笑った。
「おれも……すごく幸せな気持ちです……」
「本当?」
「……あんなに大事にしてくれて、優しくされたら、幸せだって思うに決まってるじゃないですか……」
そう言って色の薄い瞳が細められて、浩一は何と言っていいかわからず、ただ紘弥の髪を撫でた。
「おれ、浩一さんに喜ばせてもらうばっかりで、何にもできてないような気がしちゃうんですけど、……浩一さんはおれとの時間に満足してくれてるって思っても大丈夫ですか……?」
そんなことを訊かれて、浩一は膨らむ感情を御しきれなくて、泣き笑いのような顔になってしまった。
「もちろんだよ。俺はね、君に夢中だから、君が俺を欲しがってくれて夢でも見てるみたいな気分だったよ……。今日は、君に迷惑がられて、嫌がられたらどうしようって思いながら来たから余計にね」
紘弥は目を丸くして浩一を見つめ、そして言葉を失ったように開きかけた口を閉じてしまった。また何かいらぬ遠慮をしているのだろうかと思って、浩一は紘弥と目を合わせる。
「……ねえ紘弥くん、俺は君に恋もしてるけど、最初からずっと君が好きだよ。君の気遣いも、一生懸命なところも、笑顔も、もちろん身体も、全部すごく素敵だなって思って、だから恋に落ちちゃったんだと思う。それだけ夢中にさせる魅力が自分にあるんだって君が思ってくれたら、俺は君のこと好きになってよかったって思えるんだけど……どう?」
紘弥は戸惑ったようだった。浩一の手を握って、困ったように眉を下げて見上げてくる。
「……おれ……浩一さんからもらいすぎてないですか?」
「全然。今俺より幸せなやつなんていないってくらい、君に満足させてもらってるよ」
紘弥は躊躇い、浩一の目を見つめて、そして黙って口づけてきた。まるで恋人にするようなキスだな、と思って、浩一はまた嬉しくなってしまう。
「……おれ、浩一さんに会えただけでも、この仕事してよかったなって思ってます。これからも、浩一さんが喜んでくれること、俺にいっぱいさせてください……」
それは紘弥の精一杯の告白に思えた。浩一は心から笑って、両腕で紘弥を抱き締める。紘弥はすっかり身体を預けてくれて、浩一はその耳に唇を寄せて、ありがとうと囁いた。
すると強く抱き返されて、くぐもった声が、はい、と答えたのが、どうしようもなく愛しかった。
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