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恋という名前 7
シャワーを終えて出てきた浩一に、自分もシャワーを浴びてきた方がいいかと訊いてみると、返事の代わりに押し倒された。
「ごめん……だいぶいっぱいいっぱいなんだけど、このまま抱いていい?」
そう言う声も、見下ろしてくる瞳も、確かに熱を帯びていて、紘弥は息を飲む。そして、それだけ欲を覚えていても、紘弥が否と言えばきっと無理強いはしないのだろうと思うと胸がときめいて仕方なかった。
「……俺が汗くさくっても、嫌いにならないでくださいね」
冗談めかして、しかし半ば本音でそう言うと、浩一は笑った。
「そんなこと絶対ないよ。俺が君を嫌いになれる方法があったら知りたいぐらい」
どうしてこの人はこんなに自分を好きでいてくれるのだろう、と思いながら、紘弥は浩一の首に腕を絡めて口づけた。
唇を合わせて求め合う間にも、浩一の手が服の上から身体を這い始めて、下腹の熱がかき立てられる。身体のかたちを確かめるように撫でられて、服の上から乳首を探り当てられて喉の奥で鳴いた。
それだけでお互いにすっかり火がついて、身体を擦り合わせながらもどかしいように服を脱がされ、下着に手をかけられる頃には、そこに染みができるほど濡らしてしまっていて恥ずかしくなる。
「……君は、ほんとに素敵すぎて困るな……」
本当に困った声音で呟かれて、浩一の顔を見上げると、眉尻を下げて自分を見下ろしている浩一と目が合った。
「……浩一さん?」
浩一は躊躇う素振りを見せた後に、ばつの悪そうな顔をして紘弥を見た。
「俺……すごく無粋なこと考えてるんだけど、怒らないで聞いてくれる?」
「はい……」
「あのね、……タダで君を抱く罪悪感がすごいよ」
紘弥は瞬き、それからたまらずに吹き出した。
「俺、今仕事中じゃないですよ」
くすくすと笑うと、浩一はいっそう弱った声を出して言った。
「だって……これまでだって、あんなお金で君を抱かせてもらっていいのかなって思ってたんだよ」
「あんなって、全然安くないでしょう?」
「風俗だって思ったら高いけど……君の値段だと思うと安すぎるよ。こんなに綺麗で、素敵なのに……」
そう言って浩一は、壊れ物に触れるほどの力で紘弥の頬を撫でる。あんまりな過大評価だと思いながらも、浩一の気持ちは有り難かった。
「……でも俺……浩一さんからは、お金よりももらいたいものありますよ」
「え?」
「浩一さんの時間と……愛情がほしいです」
はにかみながら言うと、浩一は驚いたような顔をした後に、いっそう困った顔をしてみせた。
「……そんなの、いくらあげても足りないよ……」
「でも……浩一さん忙しいのに……」
「そうなんだけど……君の身体と……心に比べたら大したもんじゃないよ」
沁みるような声で言われて、紘弥はぎゅうと胸が苦しくなる。その声だけで愛されているのだと感じさせられた。
それがたまらなくて、浩一の身体を引き寄せる。紘弥の手に従うように身体を寄せてくれるのが嬉しかった。
「じゃあ、俺、たくさんわがまま言いますから、聞いてください。浩一さんがいやになるくらいわがまま言っても、……ずっと俺のこと好きでいて……俺のこといっぱい抱いてください……」
間近な距離で、震えそうな声を耐えてそう言うと、浩一は目を細めて、
「……君はほんとに俺を喜ばせることしか言わないなぁ」
と呟いて、頬に触れるだけのキスをした。
とうに火のついた身体にはその優しい接触はかえってつらくて、紘弥は泣きそうな気持ちになる。焦らさないでほしい、と訴えそうになったところで、浩一の熱い手に腰を撫でられて震えた。
「……俺も、君の恋人だって早く自覚できるようにがんばるから……これからも抱かせてね」
返事をする間もなく唇を塞がれて、浩一を受け入れる場所に触れられて、紘弥はくぐもった声を漏らすことしかできなかった。
身体がひどく浩一を欲しがっていて、それはきっと浩一にも知られてしまっているに違いなかった。浩一に触れられてひくひくと震える身体を自分の意思ではどうにもできなかったし、熱を持って赤くなった粘膜はもはや隠しようもなかった。
紘弥の持参したローションを、浩一の手で塗りつけられると、それだけで甘えるような声が出てしまって、いたたまれなくて顔を背ける。浩一は何も言わずに慰めるように肩を撫でて、そして中に指を挿し込んできた。
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