37 / 38
恋という名前 8
待ちわびていた場所に指を入れられてやんわりと擦られて、紘弥は息が上がるのもつま先に力がこもるのも抑えられずに喘いだ。浩一はゆっくりと指を動かしながら、紘弥のつんと立った乳首を吸う。
「やあっ……ああぁ……!」
まるでもう行為の最中であるような声が出て、感じすぎている自分が恥ずかしくなる。顔を隠そうとしたときに、浩一の優しい声がした。
「すごい……恋人にこんなに感じてもらえて、すごく嬉しい……」
見ると、浩一の愛しげな目が笑んで紘弥を見つめていて、紘弥は顔を隠す代わりにその肩にすがりついた。
「……お、俺、ドキドキして、浩一さんが欲しくて、全然我慢できないです……ごめんなさい……」
「なんで謝るの? 俺、紘弥くんが気持ちよくなってくれるのめちゃくちゃ嬉しいよ」
「だって……」
恥ずかしい、と言いかけたところで、浩一の指が中の弱い部分を撫で始めて、声が出なくなる。きゅうきゅうときつく浩一の指を締め付けていることが自分でわかって、震えながら浩一の肩に顔を押し付けた。
「紘弥くんはいつも俺で気持ちよくなってくれて、本当に嬉しい……」
囁きながら耳に口づけられて、紘弥は喘ぐ。呼吸の合間の力が緩んだ隙に、さらに指を増やされてまた高い声が出た。
水音を響かせながら紘弥の入り口をほぐす指遣いは、ひとつの痛みも感じさせなくて、それがいっそう紘弥をたまらない気持ちにさせた。ただ快感ばかりが増していって、浩一がそうしてくれているという事実で心も溢れてしまいそうになる。
浩一を受け入れて中でうんと気持ちよくなってほしいと思いながら、与えられる快感だけで余裕がどんどん失われていった。
「あっあっ……だめ、浩一さんっ……」
ほとんど泣くような声で呼ぶと、浩一の労しいような目が覗き込んできた。どうしてこんなときにまでそんなに優しい目をするのだろうと思いながら、紘弥は荒い息の合間で言う。
「だ、だめです、俺、もうイッちゃう……」
恥ずかしいと思いながらも、自分ではどうすることもできずに白状すると、浩一は紘弥の目を見つめて、額をそっと撫でてきた。
「……挿れてもいい? 俺のでイッてほしい……」
静かで、しかし切なげな声に、とても否とは言えなかった。こくこくと頷くと、浩一は微笑んで、紘弥の唇に口づけた。
指を抜かれると身体が大きく震えて、紘弥はきつくシーツをつかむ。浩一がゴムをつけて、それを脚の間にあてがわれただけで、泣いてしまいそうなほど切なくて、それを察したのかまた慰めるようなキスをされた。
「我慢しないでね……俺、紘弥くんが気持ちいいのが一番嬉しいから……」
髪を撫ぜられてそう言われて、紘弥はまた黙って頷く。何か言えば涙も溢れてしまう気がした。
「ん……」
濡れた入り口にペニスを強く押し付けられて、紘弥はただ震えることしかできなかった。いつもならもっと挿入しやすいように身体を動かすことができるはずだったのに、まるで生娘にでもなってしまったような心地がした。
「ああぁっ……!」
大きなものが中に入り込んできて、紘弥は浩一につかまりながら身をよじった。
「痛くない? 平気……?」
熱を帯びながら、それでもまだ紘弥を思いやる浩一の声に、紘弥はただただ頷く。きつく目をつぶると涙がにじんだ。
浩一はゆっくりと紘弥の奥まで入ってきて、その熱さと深く繋がる感覚に紘弥は目眩を覚える。浩一には何度も抱かれたはずだったのに、硬く脈打つものが深く入ってきてくれたことが嬉しくてならなかった。
「あっ……あ……浩一さん…………」
涙で視界が歪んで、浩一の表情がわからないことが惜しくて、もっと近くに来てほしいと思って手に力をこめると、腰を強く押し付けられて息が止まった。
「っあ……ああぁんっ……あっ、あぁー!」
堰を切った快感にびくびくと身を震わせる紘弥を、浩一は強く抱き締めてくれた。激しい悦楽の中で、浩一の腕の力が嬉しくて愛しいということを伝えられずに、紘弥は涙をこぼす。呼吸が乱れて言葉はひとつも出てこなかった。
「……紘弥くん、ほんとに可愛い……」
震える紘弥の身体を撫でながら、大好きだよと耳元で囁いた恋人の声に、紘弥はまた高く長い泣き声を漏らした。
ともだちにシェアしよう!