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第11話
「俺この顔に産まれてよかったかも」
「まだ何も言ってないよ…」
「好きでしょ?」
にっ、と笑いながら顔を近付けると耳まで赤くなった誠。
(あぁ…本当に可愛いな)
誠への一年間分の想いが溢れて止まらない。自分の腕の中に誠がいるのが嬉しくて幸せで頭がどうにかなりそうだ。思わず強く抱き締めるとお互いの鼓動が伝わってくる。
「…あの、翔くん…?」
「もう一回呼んで」
「翔くん」
「…はぁ…ありがとう…」
「…全然いいんだけど…時間…大丈夫…?」
「は?あ!ヤバい!ごめん急ごう!」
ごそっと身じろぎした誠が心配そうに見上げてくるがそれすらも可愛いなぁ…と思い思わず見とれる。何気なく付けていたTVニュースの左上に表示される時刻は、いつも寮を出る時間の五分前だった。慌ててお互い自分の部屋に戻り制服を着る。誠は姿見に映る自分を見て苦笑いした。
(なんか俺、幸せそうな顔してるな)
昨日の泣き腫らした目は何処へという程、スッキリした顔だ。
「誠〜準備できた?」
「うん!」
『誠』と『翔』、苗字から変わった呼び方。篠宮は誠が翔と呼ぶと嬉しそうにニコニコするもんだから毎分呼んでやりたいくらいだ。また逆に篠宮から誠と呼ばれるのは、櫟田に呼ばれるのとまた違うドキドキが胸を襲う。
自分の部屋をでると篠宮はもうローファーを履いていた。
小走りで向かい誠もローファーを履く。
昨日とは違う関係になった二人で一緒に部屋を出た。
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