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第14話
玄関ドアの前で誠は数回深呼吸をする。誠は何も悪くないのだが一応篠宮と付き合い始めた身なのにあっさり危ない目に遭ってしまった事に罪悪感がある。最後にもう一回、深呼吸をすると、意を決してドアノブを引いた。
「…ただいま」
「誠?!お帰り、また櫟田と何かあった?」
「…え…?」
「…あ…ごめん、聞いたんだ。えっと田中がさ、誠と櫟田が二人で用具入れに居たって言ってたから」
誠が玄関に入ると直ぐに気が付いて出迎える篠宮。その顔は心配そうで良心が痛む。田中とは用具入れに入ってきたマネージャーの名前だ。用具入れの件は知られている。やはり誠は悪くないのだが、鼓動が速まった。
篠宮は誠の手を引きリビングへ向かう。そしてソファに座り、誠を膝に跨らせた。腕を回した腰が細くて折れてしまいそうだと思い、少し力を緩める。きょときょと視線を彷徨わせるその瞳には涙の膜が張っていて、篠宮の擁護欲が一気に掻き立てられた。
「なんでそんな顔してるの」
「あの、篠宮くん、あのね俺、篠宮くんまだ好きとかわかんないけどドキドキするし、さっき俊が怖くて」
「うん?大丈夫だからゆっくりでいいよ」
「あの、別れたつもりないって言われて…仲直りしよって、俺っ、顔と背中痛くて怖くて、」
静かに涙を零しながら支離滅裂に言葉を紡ぐ誠の表情が余りにも痛々しい。震える手は篠宮の指定ジャージを掴んでいる。心臓がギュッと掴まれたみたいに酷く痛んだ。
「何された?」
「どんってした後、キス、キスされそうに、なって…」
「うん」
「避けたら顔、つかまれて、っ」
「…うん。怖かったね、気付かなくてごめん」
「っぁ」
「もう大丈夫だよ」
それ以上、櫟田の話を聞きたくなくて強く抱き締める。
誠の口から喘ぎにも似た小さな声が漏れて、話を聞いていた筈なのに変なことをしている様な気分になる。
一年間恋焦がれた相手を腕に抱き、平常心で居られる方がおかしい。対面座位のような体制とさっきの声。篠宮はまだまだ健全な男子高校生。
シリアスな雰囲気をぶち壊すかのように下半身は容易に熱を持った。
当たり前に気付かれない訳もなく、誠は顔を赤くして膝から下りようと藻掻くがそれがまたイイ所を刺激してもう誤魔化せない程になってしまった
「…翔くん…あの…」
「…ごめん…」
「…え、えっと、…フェラ…する…?」
「は?!」
「え?!?あ!!ごっごめん違うよね!!!お風呂行って!!!!」
「あっ、あ〜マジでごめん…すぐ上がるから誠も入って寝てね」
誠の爆弾発言に目を剥いた篠宮は早口で言うと風呂場に向かう。誠は誠で自分の言ったことがこの状況とズレていた事に気付き両手で顔を覆った。
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