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第16話
『そんなの関係ないだろ。』と何を言っているんだと言うような表情で誠に言った篠宮。誠は自分の存在を隠されていないみたいで嬉しくなった。喉がきゅっと締まってあっという間に視界が滲む。温かい涙が頬を伝った。
「…っふ、うぅ」
「え?どうした?」
「うれしい…跡つけて、…ほんとに、いいのっ、?」
「うん。いくらでもつけて」
「…えへへ…失礼します…」
「うん」
首は何か恥ずかしいので、ズボンを少し下げてもらい水着でギリギリ隠れるくらいの位置に吸いつく誠。そこにはうっすら跡があるような…ないような…
「…あれ?つかない」
「ンフっ、ん゛ん、あ〜、噛んでいいよ」
「笑わないでよ…痛かったらごめん」
「ごめんごめん、よろしく」
ニコニコ楽しそうに上から見下ろされ恥ずかしいのを隠すように思いっきり腰骨に歯を立てる。
小さく息を詰める篠宮。誠がチラりと見上げると目が合った。途端、早鐘を打つ心臓。美形が痛みを堪える顔がこんなに妖艶だとは思わなかった。
(篠宮くん…顔…エロすぎ…!!!)
「…っぁ」
「…想像以上に痛いね…」
「っしょう、くん」
「…その顔かわいい」
吸い寄せられる様にふわっと合わさる唇。当たったか当たってないかくらいのそれに胸が温かくなる。でも、もっとしっかり篠宮を感じたくて誠は自分から離れる唇を追いかけた。
二回目はしっかり当たった。思わず口角が上がる。ぺろりと唇を舐められ薄く口を開くと、薄い舌が侵入してきて口内を掻き回す。体がびりびり痺れて頭の回転が鈍くなる。
誠はくふくふ喉を鳴らして篠宮の首に腕を回した
「…ぁ…っぅ、ふ」
「…ん、っ、」
くちゅ、ちゅっ、と小さいけどいやらしい音が静かな部屋に響いて、隣の部屋に聞こえてないかなといらない心配をしてしまう。
「…誠…」
「っん、ぇ?」
「…今誰の事考えてる?俺とあいつどっちが好き?」
篠宮は言いながら自分でも酷な事を聞くなぁ、と思った。
誠は『恥ずかしい』『気持ちいい』『篠宮くんの顔が良い』というので頭がいっぱいなのだが、篠宮は今でも櫟田の事が好きなのではないかとずっと思っている。
誠が自分に少しずつ好意を向けてくれているのは感じているが。だが、櫟田と更衣室で別れた後に、マネージャーの一人から密室に二人きりで居たと聞いて気が狂いそうだった。あんな事やこんな事をしていたのか?自分は身を引いた方が良いのか?と考える。しかし本当は誠は小さいけど怪我させられていたのだ。
唇を離して篠宮が聞くと黙りこくった誠。至近距離でぼやけた大きい瞳がぱちぱちと数回瞬きをする。そのたった数秒でも篠宮を不安にさせる。
「しょうくんのこと、しか考えられない」
「…はぁ〜…すき、好きだよ、大好き誠」
「っ、あ、ありが、と」
少し顔を離すと、薄暗くてもわかる程に顔を真っ赤に染め上げ自分を見上げる誠と目が合う。そんな様子が可愛くてたまらない。
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