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第23話
ついにやって来たインターハイ当日。
会場は全国各地から集まった各種目の猛者達がサブプールとメインプールに分かれてアップをしている。
マネージャー、一同は控えの場所取りをした所で待機をしていた。
「…はぁ…」
一週間前からため息の数は増える一方だ。篠宮には櫟田から言われた事を話していない。篠宮の事だからあの話をすると心配してくれるだろう。だが篠宮はこの学校のエースだ。全校集会で水泳部の為に激励会が開かれる程に期待されている。そんな大事な試合の前に自分の小さな悩みで負担をかけたくない。話す勇気が無かったのもあるが。
誠も幼稚園、小中と水泳をしていたので試合前は大事な時間だと分かっていた。
それから暫く経つとアップを終え、指定ジャージに着替えた部員達がぞろぞろと戻ってきたが篠宮と櫟田はその中にはいない。一番最初の種目の最後の組に出るからもう招集場所に行っているのだろう。
「お〜い、お前ら〜そろそろ移動するぞ〜」
顧問の声掛けで部員とマネージャー達は移動する。
ここは屋内プールで二階席がある。1年生のマネージャーが場所取りをしてくれていたため、二階席の一番前のスタンドに座ることが出来た。
(…翔くん…翔くん…絶対勝って…)
『第1コース、○○高校、○○くん』
ぎゅうっと両手を痛いくらい握りしめていたので選手紹介が始まっていたのに気付かずアナウンスの声で我に返る。
ポッと短い音とフラッシュの様な光を合図に、1組目の選手がプールに飛び込む。全国大会と言う事もあり、どの選手もトップレベルで速い。篠宮と櫟田は最終組。最後の組はその中でも速い選手が集まっている。
あっという間に最終組のメンバーがプールサイドに歩いてくる。その中には篠宮と櫟田もいる。篠宮の姿を見つけて誠は思わず声を上げるが他の人の声でかき消される。
「っ、翔くん…!!」
「篠宮〜〜〜!!!」
「櫟田せんぱ〜〜〜い!!!!」
「ぜってぇ勝てよ〜ーーー!!!!」
最終組の選手が少しプールの方に傾いた飛び込み台に上がる。ドッドッドッと速まる鼓動。自分が泳ぐ訳でもないのに汗がじわりと滲んだ。
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