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第26話
「…っ、っ、…」
両手で口を覆い声が漏れないように必死な誠だが、別れたとはいえ一年間付き合っていた目の前の男は誠の弱い所を全て知っている訳で櫟田はそこを重点的に攻めてくる。
「…っも…ゃ…めて…」
「誠…誠…好きだよ…」
くるくると胸元の粒の周りを撫でていた指先が、突然先端をきゅぅぅっと摘んで思わず顎を上げてしまう。晒した喉仏に軽く噛みつかれ声が出ないように唇を噛んだ。鉄の味が口に広がる。
「…っ、っ…く…」
「誠、勃ってる」
「…っ、!」
頭は拒否しているのに快感を拾う身体が憎くて仕方がない。する…っと勃ち上がったものを撫でられてハーフパンツのゴムに手を掛けられる。
「…っっ、っ、」
「………ごめん」
それき気付き、ブンブン首が千切れそうな程頭を振ると手が誠のハーフパンツから離れていく。詰めていた息を吐き出す。
櫟田はゆっくり誠から離れて鍵を開けた。
「…出ようか」
「…っ…」
何が『出ようか』だよ、と思い文句を言おうとするが噛んだ唇が痛み、止めた。しかもここを出るとすぐに色々な県から来た選手たちの待機場所だ。もちろん誠の高校もだ。もし大声を出せば今まで我慢したのが水の泡だ。
櫟田が出たのに続き誠も出ようとする、が立ち止まる。
「あ、櫟田。部長が呼んでたよ」
「…っ篠宮、分かった、ありがとう、」
「てか誠知らない?探してるんだけど」
ドッドッドッと気持ち悪いほど大きく鳴り出す心臓。
個室の外から聞こえてきたのは篠宮の声で思わず肩が跳ねる。櫟田もこの状況が非常にマズいと気が付いているのであろう。一歩下がり、少し誠を奥に押し込んだ。
「櫟田?」
「…」
「早く出てこいよ」
「…いや、腹痛いし」
「いや今出てきたじゃん…お前ちょっとどけよ」
「篠宮ッ!!」
次の瞬間、誠の視界を埋めていた櫟田の背中はなくなり、かわりに篠宮が目の前に立っていた
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