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第42話
そして着いたショッピングモール。平日だが夏休みという事もありかなりの賑わいで、先に映画のチケットを買っておこうという話になった。
「何か観たいのがあった?」
「はい、あの、これ、なんですけど…」
「ん?」
発券機の列に並びながら旭が見せた映画のチラシは今話題の男性アイドルと若手俳優の恋愛映画だった。
物語は男性サラリーマン同士の甘く切ないラブストーリーで中々ヒットしているらしい。『男同士』。この二人には中々タイムリーな題材だ。旭はただ同士を誘っただけなのだが誠の方はそれを知らないのでまた勘ぐってしまう。
(も、もしかして、これを見て俺が偏見なさそうだったら翔くんとのこと応援してくれとか…)
ドキドキドキドキ…と逸る心臓をそっと押さえるが旭はそんな様子に気付かず誠に笑顔を向ける。
「あの、才田先輩って篠宮先輩と付き合ってますよね?」
「………え、」
「あ!僕全然偏見ないですよ!てか僕も田中先輩と付き合ってるんで!」
ニッコ〜リ!と効果音がつきそうなくらい満面の笑みで旭は爆弾発言をする。誠は一瞬頭が真っ白になった。
田中?田中って、…あの田中?誠が知っているのは部のマネ仲間の田中しかいない。
「…は?」
「僕、田中先輩と、付き合って、ます!」
信じられない。驚き過ぎて本当に『は?』しか出てこない。旭は誠が聞き取れなかったと思い、ゆっくり繰り返す。いやいやそうじゃない。本当か?冗談だとしても旭はこんなくだらない冗談を言いそうにないし本当そうだ。
「そ、そうなんだ…」
「篠宮先輩狙いじゃないって分かって安心しました?」
分かってやってたのかよ、やっぱ計算高いじゃねえか!と思ってしまうが安心したのは事実だ。これは素直に本当に嬉しい。
「ごめん俺、旭くんが篠宮くんの事好きだとずっと思ってた」
「あ〜、同室の奴らが勉強できなくて篠宮先輩に頼んでたんです。その節は付き纏ってすみませんでした」
ぺこんと頭を下げる旭にもう殆ど嫌悪感は無い。我ながらチョロいと思うが一気に気分が上昇する。
「全然気にしなくていいよ。」
「はい!」
それから少したわいもない話をしていると誠たちの番になり、ちゃんとチケットを買えた。
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