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2-越野颯人の長い一日(4)

途中SAで休憩を挟む。 「何かカフェイン買ってきますね。悠さんもいります?」 「いらーん。アメリカンドッグ買ってこい」 「はいはい、指でも齧っててください」 「じゃあケチャップとマスタード持って来いよ」 「前向きに検討しておきます」 こんな時間に売店が開いてるわけないだろうが。 トイレに寄って冷たい水で手を洗うと、少し頭がシャキッとした。 自販機で缶コーヒーを買い、駐車スペースへ戻る。 ここまで飛ばしてきたおかげで、出掛けのドタバタによる時間ロスは取り戻した。 後は少し気を抜いても十分間に合うだろう。 車まで戻ると、悠さんが車外に出て伸びをしていた。 「すっげー、体中がバキバキいってる。座りっぱなしはキツイな」 「助手席で何もしないのは辛いですよね。もう少し休憩しましょうか」 幸い、周囲に停まっている車はない。 俺は車の前で立ち止まってコーヒーを開けた。 猫舌なのでちょびちょびと缶を傾けていると、悠さんが手を出してきた。 「一口くれ」 「飲みかけですけど」 「構わねーよ」 (そういえば悪戯で何回かキスしたな、今更か) 思い直してコーヒーの缶を悠さんに手渡した。 悠さんは一口二口、コーヒーを飲むと、缶を戻してきた。 「結構甘えな」 「甘党なもので」 「覚えておくよ」 「中にいますね」 「おう。もうちょっと時間くれ」 運転席のドアを開け、席に座ろうとした時、コン、と側頭部を柔らかいものにぶつけた。 「おいおい、大丈夫か?目ぇ覚めてるか?」 顔を上げると、悠さんが車のフレームを手でつかんでカバーしていた。 どうやら俺が頭をぶつけそうになったので縁を押えてくれたらしい。 「す、すみません。ありがとうございます。……手、痛くなかったですか?」 「ああ、平気」 「よかった」 商売道具である手を俺のせいで痛めてしまっては元も子もない。 ほっとして微笑むと、なぜか悠さんが()せた。 「え、大丈夫ですか?」 「いいからテメエは中に入ってろ!」 手荒く運転席に押し込まれた。悠さんの頬が心なしか赤く見えたのは、噎せたからだろうか。 車内に座ってしまうと外で立っている悠さんの顔は見えない。 右手が上がっているのは、口元でも押さえて咳き込んでいるのか。 ようやく適温になってきたコーヒーを飲みつつ、悠さんが戻ってくるのを待った。 「待たせた」 そう言って車に乗り込んできた悠さんは、いつもの顔に戻っていた。

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