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2-越野颯人の長い一日(10)
何だかんだと言っていたが、空腹を満たし、喉の渇きも癒えた悠さんは、しばらく黙っていたかと思うといつの間にか眠ってくれた。
悠さんが静かになればこっちのもので、運転に集中して距離を稼いだ。
途中、悠さんを起こさないよう静かに休憩して、チョコを食べる。
俺は甘いものに目がない。
好きな飲み物はココアで、好きなお菓子は……たくさんありすぎて選べない。
強いて言うなら、最近食べた中ではローズファクトリーのシナモンロールが当たりだった。
あれはアイシングたっぷりで美味しかった。ハイカロリーだが。
俺の持論。甘味はハイリスク・ハイリターンだ。
満足度はカロリーに比例する。
だが、そうは言ってもやっぱり太りたくはないので、ガッツリとカロリーを摂取するのは月に二回までと決めている。
食べたらその分運動すればいい?
それはもっともだが、以前仕事から帰って夜にジョギングをしたら酷い目にあったので、夜はあまり外に出たくない。
ジムにもあまりいい思い出がないので、休日の明るいうちにジョギングするように心がけている。
俺にも色々事情があるんだ。
ちなみに、酒にはあまり強くない。しかしサバランもブランデーケーキも好きだ。
あー。考えてたらあのシナモンロールが食べたくなってきた。
だめだだめだ。
悠さんが起きだす前にできるだけ事務所に近づいておかないと。
もう事務所まで残すところ半分を切っているし。
時間も、このままならちょうど十時か多少早めに帰れるだろう。
もう一つチョコを口に放り込んで、エンジンをかけた。
渋滞もなく順調に走ること三十分。とうとう後部座席から大あくびが聞こえてきた。
「あーあぁ……いつの間にか寝ちまったなぁ……おい颯人、あとどれくらいで着きそうだ?」
「一時間弱かと思います。十時には間に合いますよ」
「bravo!さっすが颯人、俺様が見込んだだけあるな!よくやった!」
ぱちぱちと拍手が後ろから聞こえてくる。
「褒めるのは事務所に着いてからのほうがいいですよ。高速降りてから事務所までって結構混むので」
「この時間なら、通勤も終わってるだろ。だいじょーぶだいじょーぶ」
悠さんはひと眠りしてすっきりしたからか、ずいぶんと機嫌がよく楽観的だ。
悠さんの思惑通りにいけば御の字だが、さて、どうなるか。
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