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3-性的魅力とその弊害についての考察(6)

「誰かいますー?」 ……!悠さんだ。なんとかここにいることを伝えたいが、口を押さえられて脅され声もだせない。 「ったく、なんで俺様が颯人探さにゃならねぇんだよ。普通逆だろうが」 悠さんはぼやきながら扉を閉めた。 ああ。絶望が俺の脳内を押し潰す。 絶望で真っ黒になった俺の外で二人の男が身なりを整える物音がして……。 「みィつけた」 悠さんの声と共にカシャッとカメラのシャッター音が小さく、しかし確かに響いた。 「俺のマネージャーに何してくれてるんですか」 「べ、別にっ、これはっ」 大の大人二人があわてふためく気配。 「いやいや言い逃れできないですから。写真も撮っちゃったし」 「クソガキがっ」 「ああ、それ、負け犬の遠吠えってやつ?はっ、もっと吠えてみせてくださいよ」 悠さんの声音ががらりと変わった。 ドスの効いた低い声で警告する。 「バラされたくなかったら、二度と颯人に近づくんじゃねぇ」 「う」 「解ったらとっとと失せろ」 ばたばたと二人の足音が遠ざかっていき、扉が閉まった。 「颯人っ」 駆けつけてきた悠さんが目隠しを外す。眩しさと己の惨めさに、俺は思わず俯いて顔を隠した。 「来るの遅くなって悪い。痛いとこないか?」 「……手、が」 ねばつく口でやっとそれだけ言うと、悠さんは俺の背後を見た。 「ひでぇ、ガムテでぐるぐる巻きじゃねえか」 びっ、びりっと音をたて痛みを伴って両手の拘束は解かれた。 「後ろ向いてっから」 悠さんが立ち上がって背中を向ける。 俺はのろのろとワイシャツだけ引っ掛かった重い体を起こすと、太腿に垂れた精液をぬぐい、服を着た。 「ありがとうございました。お手数おかけしました」 俺がそう言うと、悠さんは振り返って俺の肩に手を置いた。 「お手数とかそういう状況じゃなかったろ。……あいつらが颯人のこと変な目で見てんのには気づいてたんだ。……クソッ、ちゃんと颯人に言っておけばよかった」 ガシガシと頭をかいて悔しがる。 「ああもう、こんな気味悪いとこさっさと出ようぜ。な?」 「髪、せっかくセットしたのに乱れますよ」 「馬鹿、今はテメーの心配してろ。俺のことはいいんだ。行くぞ」 倉庫を出て、地階に上がったところで、俺は足を止めた。 「ど、どうした?颯人」 「……気持ち悪い」 喉の奥に押し込まれた体液を、体が拒否しているかのように、今すぐ吐き出したくてたまらない。 戸惑う悠さんを置いて走り出し、手近のトイレの個室に駆け込むと、胃の中身をすべて吐き出した。 収録は滞りなく行われた。 例の二人は顔を見せず、悠さんは笑顔ではあったが、演奏は怒りに満ちていた。

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