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3-性的魅力とその弊害についての考察(7)

「……着きましたよ」 悠さんの家の前に車を止め、俺は後部座席に声をかけた。 今日の悠さんは車に乗ってから一言も発していない。ぐっすり眠っているようだ。 俺は運転席から降りると後部座席のドアを開けた。 「起きてください」 悠さんの肩をつつくが返事はない。 困った俺は深々と溜め息をついた。 「……今日はキスしないんだ?」 俺の溜め息が聞こえたか。眠ったふりを続けながら、悠さんがからかうように口許で笑った。 静寂の中、遠くで車が走り抜けていく音がする。 あまりに長く続く沈黙に堪りかねて悠さんが目を開けた。 「……」 とっさに顔を背けたが、たぶん涙は見られただろう。 「そんなこと……できるわけないでしょう」 俺はこんなにも汚いのに。 いまだに性器を突っ込まれているようでこわばる喉から、必死に声を絞り出す。 悠さんの顔色が変わった。 視界を奪われ、自由を殺されて犯される恐怖が消えずに心を(さいな)んでいる。 「悪ぃ、ごめん。すまん」 悠さんは慌てた様子でありったけの謝罪の言葉を口にして座席から降りた。 悠さんらしくもなく、どうしたらいいか迷う素振りを見せて、恐る恐る右手を軽く差しのべる。 「上がってけよ。ホットココア、飲むだろ?」 俺はしばらく躊躇ってから、悠さんの手を取った。 悠さんは力強くその手を握ってくれた。

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