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3-性的魅力とその弊害についての考察(9)
「遅くなっちまったな。今日は泊まってけ」
俺の隣に座ってココアを飲みながら、悠さんはさらりといい放った。
「え、いや、大丈夫ですよ。帰れます」
「このあほんだら。あんな話聞かされて、こんな夜遅くに外に放り出せるわけないだろうが。何が起こるか分かったもんじゃねえ。泊まれ」
もはや善意なのかワガママなのか分からないが、悠さんは真剣な顔をしていた。
「え、でも」
「でもじゃねぇ、颯人は今日うちに泊まんの。俺がそう決めたんだから黙って従え」
マグカップを床においた悠さんに、くしゃっと頭を掴まれて、逃がさないとでも言うように抱き寄せられた。
「分かったか?」
悠さんの腕の中で。
規則正しい鼓動を聞きながら。
俺は悠さんの胸に少し頬を寄せて、黙って小さく頷いた。
この温もりは嫌いじゃない。
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