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3-YAMATO's Bar

「やーまとー」 今日はだいぶ酒を飲んで、ほろ酔い気分だ。 だが、俺の頭は酔っぱらってる余裕なんかないわけで。 酔っぱらってるはずなのに、頭は素面(しらふ)のように勝手に悩んでる。 「お酒そろそろ無くなるよ。どうする?コンビニ行く?」 隣に腰かけた大和は、スツールの上で器用に膝を抱え壁にもたれて、梅酒の入ったグラスを傾けている。 俺は深々とため息をついて、カウンターの上で頭を抱えた。 「酒なんか飲んでる場合じゃねえんだよ」 「今さら何言ってんの。人んちのお酒根こそぎ飲み干しといて。なに、俺様な悠のくせに悩み事でもあんの」 「いつもは悩んだりしねぇよ。"俺様"だからな。けどさあ、今回ばかりはどうしたらいいか分かんなくてよぅ」 「なんか弱気じゃん。話聞いて欲しいの?」 大和はグラスを干すと、氷と酒を改めて注いだ。 「うーん。まあ、な。聞いて欲しいっていうか、話したいっていうか、でも話して解決できる悩みでもないっていうか」 俺がぐだると、大和はちょっとイラッとしたようで、眉間にしわを寄せた。 「ちょっとうっとおしいんだけど。話したいの?話したくないの?」 「……話したいです。聞いてください」 「ちなみに何の話なのさ?」 「……人間関係?」 「あ、恋話(コイバナ)ね。それならウェルカムだよぉ」 梅の実を頬張りながら、両手でハートマークを作ってみせる大和。 「で、相手の年は?条令どうすんの?」 「それがさあ……三十三歳」 「はあ?!十二歳以下じゃないの?!」 俺も何がどうなってこんな想いを抱えることになったのか分からない。 「三十三って……十歳も年上じゃん!悠どうしたの!」 「分かんねぇ」 「好きなの?」 「うん。好き」 それだけは確かだ。 最近は何をしてても、もちろんピアノを弾いている時でさえも、あいつのことを考えてる。 おかげで俺の調子は狂いっぱなしだ。誰か、俺の頭を調律してくれ。 「どんな人なの?ていうか誰?僕が知ってる人?」 「あー。顔は見てるな。……俺のマネージャーの」 はやと、と口に出そうとしたが、喉に引っかかって言えなかった。 なんだってんだ、畜生。 「悠のマネージャーさん?……あ、ああ!この間悠のヘアメイク行った時に挨拶された!薄幸の美人って感じの人だよね。え、あれで三十三なの?二十五、六くらいだと思ってた」 目を丸くして手を打った大和は、次ににやにやしながら俺の肩をつついた。 「いーじゃん。やっと悠も警察マスコミ気にしないでまともな恋愛できるじゃん。なんだっけ、越野さんだっけ、本人には好きって言ったの?」 「馬鹿野郎、言えるかよ」 この俺が?颯人に告白する? 好きだって?付き合ってくれって? 冗談じゃねえ。 「えー。じゃあなに、忍ぶ恋するの?悠らしくなーい」 「いやいや、忍ぶ気はねぇよ。それじゃ意味がねぇ。俺が守ってやんないと」 大和が、目玉が転げ落ちそうなほど目を大きく見張った。 大和がこんな顔をすんのは、俺が手土産に本物のウリエルのシフォンケーキを買ってきて以来だ。 「なにそれ悠かっこいいんだけど!訳アリなの?」 訳アリ、訳アリなぁ。そうだな、訳アリだな。 「じゃあ悠、王子(プリンス)じゃなくて騎士(ナイト)だね」 「なんか格が落ちた気がしてやだ。王子の方がいい」 俺がごねると、大和に軽く舌打ちされた。 「悠に騎士の資格なんかないね。このロマンも分からないワガママ王子!」

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