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4-ゆらぐな危険!(3)
「だいたい、私三十三ですよ。十三歳以上はお断りなんじゃないんですか?」
そうだ。悠さんの持病、ショタコンはどうした。
「んー、それなぁ。よく分かんないけど颯人だけ例外っぽい」
そんな都合のいいことってあるか!
「だって今キスしたぜ、俺」
「無理やりでしょう?」
「何言ってんだ、したくてキスしたんだって。なんで無理してまで颯人にキスせにゃならねえんだよ」
「……嫌がらせ?」
「そこまで性格曲がってねえわ。とにかく!俺は颯人が好きなの!」
「どの辺を?」
「うーん……気が強くて可愛いとこ」
言われてみれば、最近悠さんに赤面されることが多い。
「いつもは余裕綽々だけど、たまに素が出るだろ、颯人。そういうとこ可愛いぜ」
壁際に追い詰められ、おでこがくっつきそうな至近距離のスマイルで、軽く頬を撫でてくる。
なんだ、何なんだ、この甘ったるい空気は。
「悠さんがワガママ言って困らせるからでしょう?好意を持ってくださるなら、少しはワガママ減らしてください」
「ん?今の理論だと、俺がワガママ言うと颯人が困る→颯人が困ると素が出る→颯人可愛い→俺万歳、っていう図式になるよな。やだ。ワガママやめない。むしろ積極的にワガママを言うスタンスで行く」
悠さんはにやりと唇を片端あげて、俺の額にキスをした。
「あんまりワガママだと愛想を尽かしますよ」
俺がそう言うと、悠さんはちょっと焦った顔をした。
あ、これは悪くないかもしれない。
「なに笑ってるんだよ!可愛いな畜生!わかったよ、ワガママはいつも通りにするから」
「ワガママ言うんですか?」
「ちょっとくらい許してくれよ。な?」
宥めすかすように、悠さんの指先が俺の顎からうなじへ滑っていく。
「えぇ……どうしましょうか」
「なあおい颯人ってば!クソ、ワガママ一割減でどうだ!」
「一割?五割の間違いでしょう?」
「ああもう年上怖ぇな!頼む、二割減で許してくれ。それ以上は仕事に支障が出るから」
悠さんが諸手を挙げて降参した。
「ふふ。じゃあ二割でいいですよ」
あと、一応念を押しとくか。
「お分かりだと思いますけど、私、悠さんと付き合うとは言ってませんからね?あくまでも今後の仕事における条件ですからね?」
悠さんは拗ねたように唇を尖らせた。
「分かってるよ。いいんだ、颯人を俺に惚れさせればいいんだろ?ふん。覚悟しとけよ。俺様の魅力をたっぷり見せつけて落としてやる」
最後は不敵な笑みを浮かべて、もう一度キスを寄越した。
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