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4-ゆらぐな危険!(8)
翌朝。
朝食を食べ終わって食器を片付けていると、インターホンが鳴った。
濡れた手をタオルで拭って出ると、案の定鏡花姉さんと光だった。
「颯人久しぶりー」
「颯人お兄さん、おはようございます」
「久しぶり。光もおはよう。大きくなったね」
鏡花姉さんはこれから着替えるからなのか、Tシャツにルーズなデニムパンツでゆったりしている。
その裾を掴む光は、紺のポロシャツに白の膝丈のパンツ。
「今日なんだけど、急な仕事が入っちゃったんだ。だから光を職場に連れていくよ。手が空けば同僚が面倒見てくれることになってるから」
「あ、そう?本持ってきたから、大人しくしてると思う。ね、光。今日はいっぱい本読むんだよね」
「うん」
素直に光が頷く。
「帰りはねー、夜遅くなっちゃうと思うのね。日付変わるくらい。眠そうだったら光寝かしちゃって」
「え、じゃあ光うちに泊まってったほうがいいんじゃないの」
俺が提案すると、待ってましたとばかりに鏡花姉さんはにやりと笑った。
「颯人ならそう言ってくれると思ってたわー。優秀な弟で助かるわ。これ、光の着替えね。よろしく!」
ちゃっかり用意済みのバッグを持たされ、俺は笑うしかない。
「じゃあ明日の午前中には迎えにくるから!何か困ったら連絡ちょうだい。本番中以外はできるだけ出るように心がけとく」
「分かった」
「じゃ、光。颯人お兄さんと仲良くしてあげてね」
「はい」
光の目の高さにしゃがみ込んだ鏡花姉さんは、光の両肩を掴んで気合を入れた。
「よし、いい返事だねー。光、ファイト!」
「お母さんも、ふぁいと!」
「ありがと光ー。元気出た!じゃね」
光の頭を撫でた鏡花姉さんはあっさりと身も軽く去っていった。
「あ、光。とりあえず上がりなよ」
「お邪魔します」
ひょこんと頭を下げた光は、靴を脱いできちんと揃えた。
鏡花姉さんは、礼儀作法については厳しい。俺もよく、食事中にテーブルに肘をついてはどつかれた。
「朝ご飯は食べてきた?」
「はい。パン食べました」
「そうか。じゃ、俺も出かける支度するから、光はその間好きなことしてて」
「はい」
光はソファに座ると、早速本を読み始めた。
本当に、あの破天荒な姉から生まれてきたのかと疑わしいくらい、光は大人しい。
さて、出掛けるまであと三十分だ。
とりあえずは洗い途中の食器を片付けるか。
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