42 / 138

4-ゆらぐな危険!(9)

三十分後。 身支度を整えて、後は出かけるばかりだ。 あ、鏡花姉さんが置いて行ったバッグどうしようか。 中身を確認すると、光の着替えと寝間着、それから本が数冊入っていた。 どうせ車だし、持っていくか。 「光、お待たせ。準備できたから出かけるよ」 光は読んでいた本を閉じると大事そうに小脇に抱える。 玄関で靴を履いて、鍵を掛ける。 手を繋いで駐車場へ向かいながら、光は俺を見上げた。 「颯人お兄さんは、なんのおしごとをしてるんですか?」 「えーと、なぁ……」 マネージャー業って、子供に説明するのが難しいな。 光にも分かる言葉を使って、できるだけわかりやすく説明する。 「ピアノって知ってる?」 「はい。幼稚園にあります」 「あー、そうだね。ピアノを弾くお仕事をしてる人のお手伝いをしてるんだよ」 エレベーターを待ちながら、ない頭を捻って何とか言葉にした。 「たとえばどんなことをするんですか?」 「ピアノの演奏を聴きたい人を探したり、ピアノに合わせて歌を歌ってくれる人を見つけたり、かな」 「そうなんですか」 駐車場について、車のロックを解除する。 さてどうしよう。この後悠さんを迎えに行くわけだけど、光を後部座席に座らせるか、助手席にするか。 ……どうせ悠さんのことだ。 光に会ったら構い倒すに違いない。諦めて後ろに一緒に座らせておこう。 「光、後ろに座って」 「はい」 光がシートベルトをしたのを確認して、駐車場を出た。 まずは悠さんのマンションに向かう。 光は黙って窓から外の景色を眺めている。 マンションの前に車を止めると、俺は光へ振り返った。 「人を迎えに行ってくるから、ちょっとの間待っててね」 「はい」 あー。なぜか少し気が重い。なんだろう。 三階について、一番奥の部屋。 インターホンを押すと、「開いてっから!」という悠さんの声がした。 玄関に入ると、悠さんはまだ支度中だった。 歯ブラシをくわえたまま、バッグに服を放り込んでいる。 悠さんと目が合うと、黙ってリビングを指さされた。 「座って待ってろ」ということだろう。 リビングに行って、いつものソファに腰かけること五分。 騒ぎが落ち着き、俺の前に準備のできたバッグがとんと置かれた。 「待たせた」 そういう悠さんの前髪は、なぜか上げてヘアピンで止められている。 「前髪どうしたんですか。やんちゃな高校生みたいになってますけど」 「これなあ……寝癖がひどくってさ。下手に弄るよりプロに任せた方がいいかと思って。応急処置」 「うつ伏せで寝てたんですか?額出してる悠さんも新鮮でいいですけど」 俺がそう言うと、悠さんは嬉しそうにした。 「お、好評か?」 「新鮮って言っただけです」 「素直に褒めろよー」 悠さんは笑顔で俺の頭をぽんと撫でた。

ともだちにシェアしよう!