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4-YAMATO's Bar

ふふん。 ふふふ。 ふふっ。 ふっふふ「ねぇちょっと怖いからわざわざ人んち来てまで一人で笑うのやめてよ」 完全に呆れた顔で大和が俺を邪険にする。 「だって自分の部屋で一人で笑ってるよりマシだろ」 「笑わないって選択肢はないの?」 「これが笑わずにいられるかっての」 「ふうん」 なんと大和は他人事のようにそう言ったきり、ファッション雑誌を読み始めた。 信じらんねぇ。冷たい野郎だな。 「おい」 「何」 「笑ってる理由とか訊けよ」 「やだ」 訊いてくれよぉ。話したいんだよ俺は。 この幸せを分かち合いたいんだよ。 「恋話(コイバナ)の続きだぞ?聞きたいだろ?」 「全然」 冷たい大和はにべもない。 仕方ねぇ。 こうなったら奥の手だ。 「聞いてくださいお願いします」 「いや」 「なんでだよ!この俺様がお願いしてるんだぞ?!」 「俺様?」 ひっ。 今の大和の目、蚊とかハエくらいなら睨み殺せそうだった。 「あ、いや、わたくしめがお願い申し上げているのですが」 「あそう。でもいや」 「ブーリアンのカップケーキ、いや、ローズファクトリーのシナモンロール買ってきてやるから」 どうだ? 颯人ならこれで落ちるぞ。 「ローズファクトリィイイ?」 とても眼前の可愛いショタから発せられたとは思えない低音ボイスが聞こえた。 地獄の底から響いてくるような……。 「そんなん買ってきたら地獄に落とすよ!」 「なんでだよ!」 本日二度目のなんでだよ。いや、だって理不尽じゃね? 俺、そんな悪いことしたか? 「聞きたい?聞きたいなら教えてあげるよ!ローズファクトリーのパティシエに二股かけられてた上に僕がフラれたの!!わざわざその二股相手の目・の・前・で!!!!!あー!腹が立つ!!」 あ、そういうご関係でしたか。 ん? 「それ、いつ頃付き合ってたんだよ?」 「ああ?!ここ半年くらいだけど?!」 ぅおい!! 「二週間くらい前に俺、大和抱いたぞ?!浮気だったのかよ!」 こえー。知らんうちに間男にされてたってことじゃねーか。 「それはいいの。悠はただの変態だから。防犯のためのボランティアみたいなもん」 「変態じゃねぇよ!!」 結局、颯人のことは話せずにその日は終わった。あーあ。

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