65 / 138

5-泣かないで愛しいひと(12)

どうしても気持ち悪くて、身に着けていたものはすべて捨てた。 給湯の温度を上げて、いつもより熱めのシャワーを頭から浴びる。 気分は熱湯消毒だ。 地面に放り出されていたから、髪から砂が出てきた。最悪。 当然後頭部にはたんこぶができている。 かなり強く掴まれていたのか、腕に指の痕が痣になって残っている。 これはさすがにお風呂じゃ消えないけれど、ボディソープを泡立ててできるだけきれいに洗った。 手足はうっすらと擦り傷がたくさんできていた。 お湯が染みるのをこらえて洗い流す。 さて、一番向き合いたくない、しかし一番洗いたいところに指を入れる。 思わず顔が歪む。 ローションを使ったらしく、痛みはあまりなく、ぬるついている。 が、惨めなことに変わりはない。 気色の悪い、おぞましい体液を指でできるだけ残さず掻き出す。 こればっかりは何度やっても慣れない。 中をぬるま湯ですすぐ。 洗っている最中、何度も目じりから雫が零れた。がりがりと浴室の壁に爪を立てる。 こんな屈辱は他に知らない。 なんで俺ばかりこんな目に遭わなきゃいけないのか。 行き場のない怒りは悲しみに変わって、涙となってシャワーのお湯と一緒に排水溝へ流れていく。 あと残るは、このみじめでどん底まで落ち込んだ気分だけだが、お風呂ではどうにもできない。 せっかく助けてもらったけれど、悠さんにはあんな姿、見られたくなかった。 一通り洗い終わったが、悠さんにどんな顔を見せればいいのか分からなくて、いつまでも俯いてシャワーを浴びていた。 できることなら、溶けて下水に流れていってしまいたかった。

ともだちにシェアしよう!