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5-泣かないで愛しいひと(12)
どうしても気持ち悪くて、身に着けていたものはすべて捨てた。
給湯の温度を上げて、いつもより熱めのシャワーを頭から浴びる。
気分は熱湯消毒だ。
地面に放り出されていたから、髪から砂が出てきた。最悪。
当然後頭部にはたんこぶができている。
かなり強く掴まれていたのか、腕に指の痕が痣になって残っている。
これはさすがにお風呂じゃ消えないけれど、ボディソープを泡立ててできるだけきれいに洗った。
手足はうっすらと擦り傷がたくさんできていた。
お湯が染みるのをこらえて洗い流す。
さて、一番向き合いたくない、しかし一番洗いたいところに指を入れる。
思わず顔が歪む。
ローションを使ったらしく、痛みはあまりなく、ぬるついている。
が、惨めなことに変わりはない。
気色の悪い、おぞましい体液を指でできるだけ残さず掻き出す。
こればっかりは何度やっても慣れない。
中をぬるま湯ですすぐ。
洗っている最中、何度も目じりから雫が零れた。がりがりと浴室の壁に爪を立てる。
こんな屈辱は他に知らない。
なんで俺ばかりこんな目に遭わなきゃいけないのか。
行き場のない怒りは悲しみに変わって、涙となってシャワーのお湯と一緒に排水溝へ流れていく。
あと残るは、このみじめでどん底まで落ち込んだ気分だけだが、お風呂ではどうにもできない。
せっかく助けてもらったけれど、悠さんにはあんな姿、見られたくなかった。
一通り洗い終わったが、悠さんにどんな顔を見せればいいのか分からなくて、いつまでも俯いてシャワーを浴びていた。
できることなら、溶けて下水に流れていってしまいたかった。
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