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5-泣かないで愛しいひと(15)
ごねる悠さんを宥めて、初めてが風呂場、というあんまりな事態はなんとか回避した。
新しいバスタオルを出してきて水気を拭いて、下着を穿こうとしたら悠さんに止められた。
「どうせすぐ脱がすんだからいいだろ。俺の手間を増やすな」
はぁ?!
なぜ、今になってワガママ王子が降臨するのか。
さっきまでの恰好良くて優しい悠さんはどこにいった。
悠さんは俺を背後から抱きしめると、洗面所から連れ出した。
「おい颯人、寝室どこだよ」
「ここ、ですけど……」
リビングに面した仕切り戸を開けると、ベッドが見える。
「よっ、と」
突然悠さんに抱き上げられたかと思うと、ベッドにふわりと下ろされた。
続いて悠さんが俺の上に覆い被さる。
「颯人っ」
顎をとらえられて、キス。
するりと舌が入り込んできて、口内を愛撫する。
「んっ……ん……」
思わず吐息が漏れた。
くちゅくちゅと音が立つほど舌をからめられて、体が火照ってくる。
「ふふっ」
頬の裏側をくすぐりながら、悠さんが笑いをこぼした。
「颯人、キスだけで感じすぎ。いつもこんなんなってたのか?」
開いたてのひらで、するっと俺の局部の先端を撫でてからかった。
そこが期待するように涎を溢しているのに気づかされて、顔が熱くなる。
何か反論したいけれど、実際気持ちよくて反論する言葉が思いつかない。
「……ぁ……」
悠さんの唇が離れて、思わず声が出た。
「どうした?」
悠さんが笑いをこらえた顔で聞く。
「欲しいものがあるなら、言ってくれねぇとわかんねぇよ」
意地悪悠さんはそ知らぬ顔で鎖骨をなぞったりしている。
それもゾクゾクして気持ちいいけれど、俺が欲しいのはそうじゃない。
言うのか?
鎖骨の下にキスマーク。
かなり恥ずかしいぞ?
キスマーク二個目。
でも、まだキスして欲しい。
喉仏を甘噛み。
悠さんの頬を両手で包み込むように捉えて、目の前にきてもらう。
「ん?」
王子様スマイルが促してくる。
「……気持ちいいキス、もっとください……」
たぶん少し頬が赤い。
「ちゃんと言えたな。いいこ」
悠さんは俺の頭を撫でるように抱えて、さっきよりも熱いキスをくれた。
犬歯をなぞられてざわざわする。
舌を吸われてきゅんとする。
上顎を煽られて吐息が溢れる。
「んっ……ふぁ……」
愛しくてしょうがないと言うように、悠さんが頭を撫でてくれる。
髪を梳くその指さえも気持ちがよくて、舌を絡めてもっと、とねだった。
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