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5-泣かないで愛しいひと(17)
「ああもう、分かったよ、こうすりゃいいんだろ?」
吹っ切れたように言い放った悠さんは、唐突に体を起こしてベッドの上に座った。
「?」
何をする気なんだろう。
「ほら、颯人も」
悠さんが俺の腕を掴んで引っ張り起こす。
起きたら悠さんの膝の間に座るように促された。
「何ですか?」
悠さんの膝の間に向かい合うようにして座らされた。
足を悠さんの後方に投げ出して、悠さんに抱きつくように……。
勃ち上がった性器同士が触れ合って、ようやく気付いた。
「あ、ちょっと……悠さん」
顔が、というより首から上全部が、かっと熱くなる。
真っ赤になった俺を、悠さんが意地悪な目で眺める。
「颯人、どうした?これなら颯人の好きなこと両方できるだろ?」
悠さんは俺の手を取ると、二人の性器をまとめて握らせた。
悠さんの大きな手がその上から押さえていて、逃げられない。
ちゅっと音をたてて軽くキスをした悠さんは、裏のある王子様スマイルで俺に言う。
「二人で一緒に気持ちよくなろうぜ、な?」
悠さんの手に導かれるままに、手を上下に動かして、それを扱く。
二人分の濡れた音が羞恥心を誘う。
「キスもしよ、颯人。おいで」
一時的に悠さんが片手を離して、俺の頭を抱き寄せる。
俺は少しのびあがって唇を重ねた。
くち、くちゅ、と手の中が音を立てて淫欲を煽り、ちゅ、と舌を絡ませた口づけが熱を生む。
快楽が二ヶ所で同時発生して、頭の中が真っ白になる。
「は、ぁ、あ、ん」
気持ちいいという言葉の代わりに、口から意味のない声が零れ落ちた。
びっしょりと濡れた片手で扱きながら亀頭を撫でる。
「ん、ぁ、それいい。気持ちい」
悠さんが目を閉じてキスをしながら呟く。
次第に手の動きが速くなっていく。
「はぅ、う、ん、イキそう……です……!」
「俺も……一緒にイこ」
悠さんの手がぎゅっと俺の手ごと握りこむ。
「んぅ、ぁ、あ、あ……!」
手の中に欲望の残滓を放って、互いにもたれ掛かるようにして荒い息を吐いた。
「ふふ」
悠さんが笑って俺を抱きしめた。
「颯人のイキ顔めちゃくちゃ可愛かった」
「ずるい。なんで見てるんですか」
「だってそれはやっぱり見ておかないと」
むくれた俺の頭を撫でながら、悠さんは優しく笑う。
その後、精液でべとべとになった俺の両手を拭いてくれた。
拭いてもらいながら、言ってみた。もう慣れてしまって恥ずかしくない。
「キスしてください」
「いいよ。ちょっと待っててな」
拭いたティッシュを棄てて、戻ってきた悠さんを急かす。
「早く、キスくださいってば」
「なんだ、颯人にワガママが移ったな」
待ちきれなくて悠さんに抱きつくと、悠さんが頬にキスした。
「それじゃないです」
「分かってるよ。ただ、あんまり颯人が可愛いから、したくてさ」
俺は、女顔なのを自覚してるから、可愛いと言われるのはあまり好きじゃない。
「悠さん、可愛いって言いすぎです。次から、可愛いって言う代わりにキスしてください」
「それじゃ、ずっとキスしてることになるぞ」
「いいですよ」
「んじゃ」
そう言って悠さんは俺を抱き返すと、さっきより気持ちいいキスをくれた。
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