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5-泣かないで愛しいひと(18)
キスをしながら、悠さんがそわそわしだした。
俺に触れている悠さん自身は早くも臨戦態勢に入っている。
ただ、俺に気を遣って言い出せないみたいだ。
相当恥ずかしいけど……言った方がいい、よな。
「悠さん、挿れてください」
「え、颯人」
「あの男の後なんて悠さんも嫌かもしれないですけど……最後に挿れたのがあの男だなんて、私は嫌なんです。早く忘れたい、から、だから。……それに、悠さんに気持ちよくなって欲しいんです」
だんだん頬が熱くなってくるのを感じた。
たぶん真っ赤な顔してる。
悠さんの瞳を覗き込んで。
「おねがい」
すると、悠さんまで少し赤い顔をして言った。
「んな可愛いお願いすんじゃねぇよ。でも、体は大丈夫なのか?……その、無理やり挿れられたわけだろ」
悠さんの手がいたわるように俺の手を撫でる。
「大丈夫、だと思います。ローション使ったみたいだったから」
「そう、なのか?……でも、痛かったらすぐ言えよ?」
「はい」
頷いて、小さい声でおねがいした。
「あの、優しくして、くださいね」
「当たり前だろ、心配すんな」
「……初めて、なので」
「へ」
妙な沈黙になってしまった。
「い、いえあの、童貞ではないです。ただ後ろは、無理やりしかされたこと、ない、ので。知らない人に無理やり襲われてばっかりだったから、男の人が好きだって分かってからも、誰か好きになっても、付き合う気に、なれなくて」
だから。
「まともにするの、悠さんが、初めて、なんです」
ああなんだこれ、めったやたらに恥ずかしいぞ。
「だから、上手にできるか分かんないですけど……っ!」
言ってる最中に悠さんが勢いよく抱きついてきた。
胸が震えている。
あ、悠さん、泣いてる。
また泣かしちゃってごめんなさい。
「颯人。ほんとに、俺のことを好きになってくれて、ありがとな。優しくするから、安心しろ」
耳元で震える声が囁く。
その声は誠の響きがして、信じてもいいのかな、と柄にもなく思った。
「悠さん、泣かないで」
「馬鹿野郎、泣いてなんかねぇよ。ちょっと目に大きめのゴミが入っただけだっつの」
拳で目をこすった悠さんは、柔らかい笑顔を浮かべた。
俺に向かってすっと手を差し伸べる。
「来いよ、颯人。一緒に気持ちよくなろうぜ」
俺はその手を取って、悠さんの膝の上に座った。
ぎゅっと、苦しいほどに抱きしめられて、甘い甘いキスをされる。
ああ、俺、今幸せだ。
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