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5-泣かないで愛しいひと(22)
「んっ……ダメ……」
結局挿入前にして早くも喘がされてる俺。
「は、ぁっ……はぅっ、ゆ、う、さんってば……」
悠さんの頭を胸に抱いて、切なく善がらされる。
悠さんのミルクティー色のさらさらした髪が、俺の指で乱れていることにも気づけないくらい。
「ん?どした」
そ知らぬ顔を上げて聞いてくる悠さん。
「手、加減、してください……」
「そりゃ無理な相談だ」
そう言って再び俯いて左胸の尖りを口に含む。
薄く色づいていただけのはずのそこは、今や赤みを増してさくらんぼみたいな色をしている。
色っぽくなっただけならいいのだが、どうやら感度も増していて、悠さんの舌が優しく撫でる度に、体の奥が欲しい欲しいともどかしく疼くのだ。
この年になるまで知らなかった。俺が乳首攻められると弱いなんて。
知らなくてもよかったのに、悠さんが見つけてしまった。
鼻にかかったやましい声が喉を通る時、恥じらいを掠めていく。
「ん、ぁん……悠さ、ん……」
名を呼ぶとその度に柔らかく抱きしめてくれる。
背中をさするその手には間違いなく愛情がこもっていて、ついぞ馴染みのなかった感覚に鼻の奥がつんと痛む。
俺も泣きそうだ。
濃密な感情が結露して涙になる前に、少しだけ吐き出す。
「悠さん……好き、です……」
「ん?どの辺が?」
「それは、言えませんっ」
ちゃっかりこの機に乗じようとした悠さんが、ちっと舌打ちして笑った。
「あぁ……もうダメ……ダメです、ぅ」
「颯人、溶けそうになってる。溶けんな。しっかりしろ」
悠さんが伸び上がって、口づけをくれた。
しかし労わるように重なるそれは、ますます俺を溶かそうとする。
長い指が優しく俺の髪を梳いていって。
慈しむような瞳は俺だけを映していて。
その声は俺の名を呼んでくれる。
これ以上の幸せってあるんだろうか。
もうこれだけで昇天しそうなのだけれど。
「しょうがねぇなー。颯人溶けそうだし、そろそろ勝負キめてやるよ」
にやりと笑った悠さんは、俺を抱き起こした。
「今度は颯人が上な!」
さらっと爽やかに言い放つ悠さん。
俺は、ああ、上か、となんとなく頷きかけて……勢いよく悠さんの顔を見た。
「は?!あ……あの、私が上って、騎乗位するって言ってます?」
「そだよ!」
「誰ですかその朗らかキャラ。……じゃなくて、そんなの無理です!」
昔、女性とお付き合いしていた時は、騎乗位でことに及んだ経験もあるが、俺が上になったことは当然ない。想像できない。
「無理なことねぇって。ちょっと重力の方向が変わるだけだって」
宥めるように、膝の上に座っている俺の髪を撫でる悠さん。
いや、大違いだろ!
「だってその……私が動くってことですよね?」
俯き加減で聞くと、悠さんが俺の頬にキスをした。
「なんでそう颯人は可愛いのかなぁ。ほっぺ赤いし目は潤んでるし。まだ俺の心臓撃ち抜こうとしてんの?俺もう穴だらけだぞ?」
「ねえ!はぐらかさないでくださいよ!」
「んー。ふふ。だって自分で好きなところに俺のを当てて喘ぐ颯人を見たいんだよ。……分かったよ、途中からは俺が下から頑張ってやるから、な?いいだろ?」
悠さんに王子様スマイルで宥めすかされ、耳元で甘い甘い言葉を囁かれて、いつの間にか俺は頷いてしまっていた。
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