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5-泣かないで愛しいひと(24)
「はぁ、あ、ぁん」
腰を使い、抽挿を繰り返す。
事故とは言え一回射精したので、悦楽を味わう余裕ができた。
さっき悠さんに指で弄られたぴりぴりするところに、悠さんのを軽く当てる。
悠さんの言う通り、もうぴりぴりはしなくなって、体の奥がきゅんと切なくなるようになった。
「んぅ、はぁ……」
悠さんと指を絡めて手を繋いで、愛する人と繋がっていることに純粋に悦びを覚える。
「颯人、気持ちいい?」
そう問われて、素直にこくんと頷いた。
「よかった。俺も気持ちいいよ」
繋いだ手にぎゅっと力がこもる。悠さんの瞳を見つめながら、手を握り返す。
例え世界が滅びて二人きりになっても、悠さんとだったら楽しく暮らせるだろう。
そんな俺らしくもないことを考えてしまうほど、幸せだった。
「ぁあ、ん……」
そろそろ快楽の階段を登りつめそうだ。
せっかくだから、悠さんにももっと気持ちよくなってもらいたい。
繋いでいる悠さんの手の甲に口づけを落として、姿勢を変えた。
「ん、颯人ぉ……」
悠さん自身を根元まで飲み込むと俺の奥に届いて、悠さんが切なげに吐息を漏らす。
表情に余裕がなくなって、俺の好きな雄めいた顔になる。
数回ゆっくりと動いて、奥で亀頭を愛撫する。
奥を突かれるのは、満たされる感じがして気持ちいいが、悠さんもイイらしい。
その目の奥に、王子らしからぬギラギラした光が宿る。
「はぁ、あ、う……」
荒い息とうめき声を上げた悠さんは、繋いでいた手を離して、俺の腰を両手でがっしりと掴んだ。
「わり、颯人……ちょっと激しくしてもいいか?」
「もちろ、んっ」
俺がそう言うが早いか、激しい突き上げが始まった。
俺の最奥を荒々しくノックする。
さっきまで感じていた切なさが満たされていく。
「ぁ、ぁ、ぁ、ぁああ!」
悠さんを見つめていたいのに、背中が勝手に反り返って天井しか目に入らない。
満たされて満たされて、何かがあふれ出しそうな感覚。
あ、これはヤバいかも、と思った瞬間、
「んっ、はや、とぉっ……」
悠さんが俺の奥で吐精した。
その後も続けて数回奥を突かれて、遅れて俺もイった。
体が自由にならない。快楽に縛られてひくりひくりと痙攣を繰り返す。
頭の中は真っ白だ。
やがてゆっくりと体から力が抜けていって、繋がったまま悠さんの隣に倒れ伏した。
「ゆうさ、ん……」
重い腕を持ち上げて、悠さんに縋りつく。
本当はキスをしたいのだが、とてもその体力がない。
せめて、と悠さんの肩に額をつける。
二人の荒い息だけが、しばし部屋の空気をたゆたっていた。
しばらくして、悠さんが俺へ手をのばして、汗に濡れて頬にかかった髪を指先で耳にかけてくれた。
「疲れたか?」
悠さんの優しい声が訊く。軽く頬に触れてくれるだけで無性に嬉しい。
「疲れたけど……気持ちよかった……です」
俺が正直に言うと、悠さんは唇に笑みを浮かべた。
「よかった……俺も」
悠さんがゆっくり俺を抱き寄せて、腕の中に閉じ込める。額に触れるのは悠さんの唇。
俺は顔を上げて悠さんの瞳を見つめた。
悠さんも見つめ返して、互いの瞳に相手の姿を刻みつける。
今を忘れないように。
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