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6-星が降る夜は(2)
そして、問題の第三次予選の日。
さんざん文句を言っていた悠さんも、練習に練習を重ね、準備を進めていた。
結果、第三次予選を見事通過した。
「ははん。どうよ。俺様にできないことはねぇ」
「練習してるときはずいぶん弱ってたじゃないですか。イタコとか口走ってましたよ」
「人間は苦境を乗り越えて強くなる生き物なんだよ。あれもしょせんはただのハードルにすぎねぇ」
帰りの車内。
うって変わって上機嫌の悠さんは、唸り声を上げて肩を伸ばしながら調子のいいことを言っている。
「完璧だったろ?」
「はい。ちょっと心を打たれました」
「ほら見ろ。俺様にできないことはねぇ」
「次はセミファイナルですね」
「セミファイナルも、ファイナルも準備万端だからな。ここまで来たら優勝はもらったも同然だ」
そしてセミファイナルを難なく通過、ファイナルも……見事優勝した。
意気揚々と事務所に戻った悠さんは、高らかに宣告した。
「皆の者よく聞け!優勝したぞ!」
自席でおやつを食べていた山岡さんが、ぱちぱちと気のない拍手をした。
「おー。おめっとーさん。ほれ、祝いだ。受け取りな」
温泉まんじゅうを一つ悠さんに渡し、肩をぽんと叩く。
両手でまんじゅうを受け取った悠さんは手の中のそれを見て、ぽつりと呟いた。
「少なくねぇか」
「しゃぁねぇな、もう一つやるよ。それで終わりだかんな!」
「いや、まんじゅうの数じゃなくて。もっと盛大に祝えよ!」
不満げな悠さんが吠える。
「なんかなぁ。今更悠が優勝したところであんまり……なぁ?吹雪」
問いかけられた桧山さんも、苦笑している。
「山のようにあるトロフィーが一個増えたってだけだろ?特に感慨深くもないなぁ。悠には悪いけど」
「はぁぁあ?なんだよお前ら冷てぇな。それなりに権威のあるコンクールなんだぞ?なぁおい颯人は分かってくれるよな?」
「え?えぇ、まあ」
「じゃ、もっと褒めろ。なんか褒美くれ」
子供か!
「祝賀パーティー盛大だったじゃないですか」
「だって挨拶ばっかでろくに飯食えなかったんだよ!俺だって寿司食いたかったのに!」
「はは、なにか考えておきます」
ご褒美……ねえ。
悠さんが喜ぶことって何だ?ああ、ショタ以外で。
というか、コンクールで優勝したからって、なぜ俺がご褒美をあげなきゃならないんだ?
欲しいものがあるなら、賞金で買えばいいじゃないか。
ん。
お。そうだ、あれ、まだ使ってないじゃないか。
ふふ。この機会に使っておこうかな。
悠さんが喜ぶ結果になるかは分からないけど。少なくとも俺は楽しめる。
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