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6-星が降る夜は(5)
「なぁ颯人、次のSA寄っていいか?」
高速道路で前を走る車を見ながら、悠さんが口を開いた。
「ええ。あ、疲れました?」
「疲れてねぇ!!ちょっと手洗いに行きたいだけだ!!」
あくまでも言いはる悠さん。
「そうですか?それならいいんですけど」
SAの駐車場に車を停め、悠さんはトイレに、俺は飲み物を買いに外に出た。
自販機コーナーで待ち合わせることにして、いったん別れる。
自販機で飲み物を買い、そのまま近くで一口二口飲んでいたら、クレープの屋台を見つけてしまった。
フルーツ多めでおいしそうだ。
やっぱり苺……、いやチョコとバナナのも美味しそう……そんなことをぼんやり考えていたら、悠さんが戻ってきた。
俺の視線の先を見て笑う。
「颯人分かりやす過ぎだろ。何が食いたい?」
そう聞かれてとっさに「苺」と答えてしまった俺はたぶん食いしん坊。
それを聞くなり悠さんは屋台に行って、
「苺と……あとチョコのやつ」
あっという間にクレープを手に戻ってきた。
「黙ってその財布をしまったらクレープ食わしてやる」
「え、ええ?」
「いいから早くしまえ。二つとも俺が食っちまうぞ」
しかたなく財布を引っ込めると、苺のクレープをくれた。
近くのベンチに並んで座っておやつタイムだ。
「どういう趣向ですか?」
「んん?」
「運転してくれるし、クレープ買ってくれるし。いつもと違うじゃないですか」
「何言ってんだ、俺だってたまにはやる男だぞ」
「何かやましいことがあるとか」
「馬鹿言うな。なんもねぇよ」
「怪しいです」
「はは、ほっぺにクリームつけて睨んだって怖かねぇよ」
え、クリーム?いつの間についたんだろう。
慌てて左頬に触れると、悠さんが笑った。
「そっちじゃない。反対」
そう言って顔を寄せると、俺の右頬についていた生クリームを舐め取った。
「ちょっと、恥ずかしい取り方しないでください。もう」
「いいだろ、たまにはこういうのも」
「人目があるところでは慎んでください」
悠さんはよく言えば情熱的、悪く言えば人目を気にしなさすぎるところがある。
俺が人目を意識し過ぎなのかな。
いや、キスとかハグとか、衆人環視のもとでやることじゃないよな。
愛情表現してくれるのは嬉しいけれど、やっぱり俺は恥ずかしい。
「……というわけで悠さん。今後は人目のある所でのハグ・キスは禁止です」
「どういう思考回路でその結論に至ったのかわからんけど、イ・ヤ・だ。恥ずかしがりながらも嬉しそうな颯人を見たいんだよ」
うれし……っ?!
「嬉しそうになんてしてません!」
「ふふん。はいはい、そういうことにしといてやるよ」
「本当に嬉しがったりなんてしてないんですからね!」
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