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6-星が降る夜は(7)

涙をこっそり押さえていたら、悠さんにばれた。 何でだ。さりげなくやったはずなのに。 目尻にちゅっとやって、まだ零れる涙を唇で拭われた。 「どうした?」 悠さんは少し屈んで俺に視線を合わせ、子供をあやすような微笑みを浮かべる。 俺は急に恥ずかしくなって顔を背けた。 悠さんの視線はまっすぐ過ぎる。 「ちょっと太陽が眩しかっただけです」 そう言うと、悠さんは笑って俺を抱きしめた。 「まったく。素直じゃねぇなぁ」 しばらくそうやって俺の頭を撫でていたが、ふと時計に目をやってその手を止めた。 「夕飯六時半って言ってたから、ちょっと時間あるな。風呂入ろうかな」 「あ、じゃあ私もその後に入ります」 「なんでだよ」 クローゼットを漁っていた悠さんが振り返って不満げに唇をへの字に曲げた。 「なにも別々に入らなくても。入るなら一緒に入ればいいだろ」 浴衣と帯が顔面めがけて飛んでくる。 「え、あ。ぅ」 浴衣をとっさに受け止めるのに精一杯で言葉にならなかったが、俺が言いたかったのは、『え、一緒に入るんですか?確かにそれなら時間的にもゆっくりできますけど……悪戯とかしないで普通に大人しく入りましょうね?』だ。 絶対に悠さんには伝わってない。 「心配すんな、俺が丁寧に洗ってやるから。この間、気持ちよかっただろ?」 ほら伝わってない! うーん……でも、さっき見たところだと、露天なのは湯船だけで、洗い場は室内だったし……。 いやいや!室内ならいいって問題じゃない! 「どうした颯人、早く入んねぇと時間なくなっちまうだろが」 焦れた悠さんが俺を浴室へ引っ張っていく。 「悪戯はなしにしましょうね?」 「はいはい。じゃあ前戯な」 悪化したし!! 「そうじゃなくて、健全にお風呂を楽しみましょうよ。ね?」 「健全だろ?ただ洗いっこしよってだけじゃん」 念入りに洗ってくる部位が問題なんです! 「早く入ろうぜ。浴衣と帯持ったな?タオルは風呂場にあったから大丈夫だな。よし!行くぜ!」 どーんと背中を押されて脱衣所によろめき入る。 はあ。しょうがない。一緒に入るか。 ◇ ◇ ◇ うー……。 「なにその可愛いむくれ顔。ほっぺふくらまして可愛い子ぶったって、今はキスぐらいしかあげるもんねぇよ」 「私は怒ってるんです」 「何を怒ってんだ?俺の可愛いぶりっ子ちゃん」 額にキスをもらい、湯に顎まで浸かりながら、俺は膝を抱えていた。 まだしばらくはこの姿勢から動けないだろう。 全て目の前のこの男のせいだ。 「そんなちっちゃくなってないで足伸ばせよ。気持ちいいぜ」 「いやです」 俺の反発などどこ吹く風で、悠さんは足を伸ばして風呂を堪能している。 俺だって縮こまってないで、のんびりゆったりしたい。 したいのだけど……まだちょっとクールダウンが必要みたいだ。下半身の方が。 悠さんが俺の傍に寄ってきて、耳元で囁いた。 「そんなに好かった?泡々オ「言わないでください」」 「いーじゃん。またやろうな泡オナ「黙ってください」」 なんで平気でそんな単語を口にできるんですか恥ずかしくないんですかああもう存在が恥ずかしいですものね絶対二度としませんから! 心の中でまくし立てて鬱憤をはらす。 「気持ち良さそうな顔してたのになー。颯人は恥ずかしがりだな」 「そんな顔してません!」 小声で反論する。 「俺に見られながら自分でするの、そんなに良かったかー」 「違います!」 確かに一人でするよりはちょっと背徳感があって気持ちよかったかも……いやいや、何考えてんだ! 「はいはい、颯人はもうちょっと素直になろうな」 悠さんは宥めるように俺にキスをしてぎゅっと抱きしめてから、ざばっと湯船から出た。 「そろそろ夕飯じゃないのか?先出るな」 「え?!ちょ、ちょっとまだ……」 まだおさまってないものがあるんですけど!

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