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6-星が降る夜は(9)

結局、そのまま食事をした。 慣れてしまえばどうということもない……だろう、と思っていたけど、慣れることはなかった。 あいにくと露出趣味はないもので、ただただ浴衣の袷をきつく直すばかり。 食事?えぇまぁ美味しかったんじゃないですかね。 悠さんも美味しそうに食べてましたし。 正直なところ、俺には味わっていただくほどの心の余裕がなかったもので……。 「あー、美味かったー」 最後の水菓子までしっかりいただいて、食器を下げてもらうと、満足した悠さんが畳に転がる。 「悠さん、お行儀が悪いですよ」 「んん?今日ぐらいいいじゃんよ」 上機嫌な悠さんが、畳の上を這ってこっちに来る。 「なーあー颯人ぉ」 「なんですか?」 「んふふ。なんでもねぇ」 そう言いながらにっこにこな笑顔で俺の太ももに頭をのせる。 いやちょっと、今そっちの方面は……。 案の定、俺の股間に手を伸ばす悠さん。 「お元気?解放された気分はどうだい?」 冗談じゃない。 指先ですりすりと浴衣越しに撫でる。 俺は唇を噛んで堪えた……がそんな俺の気持ちとは裏腹にゆっくりと少しずつ質量を増していくソレ。 「あははっ、元気だってよ!」 笑って膝から転げ落ちた悠さんが、起き上がりざまにいきなりキスをしてきた。 「んっ……何、考えてるんですか?」 キスの合間に言葉を交わす。 「ふふっ、俺、颯人大好きだなって」 悠さんの指が浴衣の隙間に忍び込む。 「いやっ、ちょっ、ちょっと……」 キスしながら悠さんの手を押さえて必死の攻防戦を繰り広げていると、「失礼します」と部屋の外から声がした。 残念そうに悠さんが俺から離れる。 はい、と俺が返事をすると、すっと襖が開いた。 「お布団を敷きにまいりました」 「お願いします」 邪魔にならないよう隣の小部屋で座っていると、あっという間に敷き終わった。 「明日の朝食は八時でよろしいですか?」 「あ、はい」 「かしこまりました。失礼します」 「あ!」 悠さんが宿の人をとっさに引き留める。 「氷、もらえますか?」 「すぐにお持ちします」 氷が届くと、悠さんはバッグの中から酒瓶を取り出した。 ウイスキーと焼酎をかざして、ニッと笑う。 「たまには酔っぱらおうぜ」 「私は飲み過ぎ禁止なんじゃありませんでしたっけ」 また悠さんが寄ってくる。 「ちゃんと覚えてたんだな、いいこ」 ぎゅっと抱きしめて、頭を撫でられた。 悠さんの腕の中で続きを聞く。 「でも、俺と二人きりの時は好きに酔え。な?」

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