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6-星が降る夜は(11)

「悠さん、今何時ですか?」 「は?ちょうど九時だけど」 きょとんとした顔で悠さんが答える。 九時かぁ。たったの三時間。 もったいないけど、悠さんの好きにさせるのはここまでだ。 「悠さん、その……以前、私の家に来た時に、賭けをしましたよね」 「?なんだっ、け、あ……あぁ、したなあ。あれ、どっちが勝ったんだっけ」 「悠さんが先にイったので、私の勝ちです。私が勝ったら、一日悠さんが私の言うことを何でも聞いてくれる約束でしたよね」 悠さんの口端がひくひくっとひきつって半笑いになる。 「そんなこと言ったっけ」 「言いました」 忘れたなんて言わせない。 「で、それを今日使うって?」 「はい」 「今日は止めといた方がいいんじゃねぇか?だってあと三時間しかないんだぞ。明日にしとけ、な?好きなだけ甘やかしてやるから」 悠さんは案の定止めにかかってきた。 そりゃそうだ、今このタイミングで使うってことは、好き放題した報復を受けることになるから。 「もったいないのは分かってますけど、私は今、使いたいんです。いいですよね?」 「うぅ、俺に止める権利はないんだろ」 もちろんです。 「じゃ、十二時まで悠さんは私の言うことを何でも聞いてくれるってことで」 ふふふ。自分の中の何かが目覚めそうな気分になってきた。 「おい、お手柔らかに頼むぞ。さっき風呂で気持ちよくしてやったろ?」 あ、俺の好きな、悠さんの焦り顔がいっぱい見られる。ふふ。 「どうしましょうか。とりあえず悠さんも下着は脱いでくださいね」 「ちょ、ちょっとじゃあ、後ろ向いてくれよ」 「なぜですか?何か見られると都合が悪いことでも?」 「颯人に見られてると恥ずかしいだろ!」 ふふふふふ。 悠さんは完全に焦ってる。ほんのり頬が赤くなってきた。 「大丈夫ですよ。恥ずかしがることなんてないですから」 「ううー。鬼!悪魔!」 「はいはい。早く脱いでください」 「俺が恥ずかしがってんの見たって楽しくないだろ!」 「いいえ。とても楽しいです。ふふ」 氷がないので焼酎をストレートで味わいながら、笑いが止まらない。 「恥ずかしいなら、私が脱がせてあげますよ」 俺は立ち上がると片手で悠さんに抱きついて、至近距離で悠さんの瞳を見つめながら下着に指をかけた。 魅入られたように、悠さんの瞳も俺の瞳から離れない。 下着を膝まで下ろした。 瞳を見つめたまま、俺はうっとりと微笑んだ。 「悠さん、後は自分でできますよね?」 悠さんは黙って俺を見つめたまま、こくんと頷いた。 俺がキスをしている間に、下着から足を抜いてどこかへ投げ捨てたようだった。 舌が熱い。

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