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6-星が降る夜は(12)

十時三十分。 「んーん……なあ、俺にも一口くれよぉ」 ごろにゃんモードに戻った――というか俺が戻した――悠さんが、俺の膝の上に頬をのせてねだる。 はい、と焼酎の入ったグラスを差し出すと、悠さんはいやいやと首を振る。 「『一口』欲しいって言ったろ」 ワガママ二割、甘え八割くらいが俺の好みらしいと学んだ悠さんは、ちょこっとワガママも混ぜつつ甘えてくる。 アルコールを口に含んで悠さんにちょっと起き上がってもらうと、『一口』焼酎を飲んでもらった。 「ん……」 喉を焼く液体を飲み込んでからも、悠さんがキスをやめない。 俺の口内に残るアルコールをすべて奪い取ろうとするかのように、頬の裏から上顎に至るまで、ありとあらゆるところを舌が愛撫する。 「……は」 腹の底がじわじわと熱を帯びてきて、俺は悠さんの胸を軽く押してキスを終わりにした。 悠さんが不満そうに眉根を寄せて下唇を突き出して、むっとした顔をする。 「なんで?俺のキス嫌いか?」 ふふ、その表情も愛おしい。 「いいえ、大好きですよ」 「じゃあ続きしようぜ」 なあ、と悠さんは俺の頬に手を添えて、親指で唇をなぞる。 「これ以上キスしてたら、キスにならなくなるから」 「ん?」 悠さんが首をかしげる。 「阿呆な俺にも分かるように言ってくれよ」 ああ、なんでそんなに魅力的な顔ばっかりするんですか。 ずぶずぶハマって、抜け出せなくなる。 「キス以上を求めたくなるでしょう?」 「いいじゃん。キス以上、しよ?」 悠さんは嬉しそうに笑って、ちゅ、ちゅ、ちゅ、と俺の唇と鼻の頭と右頬に口づける。 「まだ、駄目です。大人の時間になったら、ね?」 「それって何時?」 「さあ……何時でしょう」 悠さんは待ちくたびれた子供のように、俺の浴衣の裾を引く。 「もう充分大人の時間だろ?なあ」 「まだ早いです」 悠さんの額に口づけを返して宥めた。 ◇ ◇ ◇ 十一時五十分。 俺の膝の上で眠くなった悠さんは、髪を梳くように撫でられると気持ちよさそうに微笑む。 「なーあー……。おとなのじかん、まだ?」 「もう少しですよ」 「なんかもう、なでられてるだけできもちいいんだよ……」 「ふふ、猫みたいですね」 「ねこ?はじめていわれた。どこがねこみたいなの?」 頭を撫でる手を止めると、やめるなと言わんばかりに、ぐりぐりと頭を押し付けてくる。 「ごろごろって、今にも喉を鳴らしそうじゃないですか。そんなに撫でられるの好きですか?」 「ふふん。だーいすき、だよ」 空いている俺の手を取って、中指の背に唇を触れる。 「ずっと、はやととふたりきりで、こうしてたい」

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