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7-素直になれないよ(2)
ステージへの通路で、三浦さんのマネージャー、山野さんに出会った。
「あ、越野さん、お久しぶりです。どちらに?」
「こ無沙汰してます。ステージのチェックをしに行くところです」
「ご一緒していいですか?少しお話をしたくて」
「え、ええ。もちろん構いませんよ」
並んで歩きながら、山野さんが言いにくそうに口を開く。
「小原さん、まだお怒りですか?」
「お恥ずかしい話ですが。ステージには立たないの一点張りで……」
俺がそう答えると、山野さんはああ、と呻き声に似た声を発した。
「本当に申し訳ないです」
「え?なんのお話ですか?」
なぜ悠さんのワガママを山野さんが謝るのか。
「あ、越野さんはご存知ではないですよね。……そもそもうちの三浦が原因なんです」
山野さんの話を要約すると、以前、悠さんと三浦さんでコンサートをやって以来、三浦さんが悠さんに対して妙な敵がい心を持っているのだと言う。
原因は話そうとしないので分からないが、その時から、悠さんに喧嘩を売るようなことを繰り返しているのだとか。
悠さんのコンサートとまったく同じ曲目で、数日ずらして、より規模の大きいコンサートをしたり、イベントで連弾をした際、わざと腕をぶつけて悠さんの邪魔をしたりというような嫌がらせじみたことを続けた。
結果、もともと気の短い悠さんが「二度とツラ見せんな」と吐き捨てるまでに至ったらしい。
「なので、うちの三浦が全面的に悪いんです。本当に申し訳ない」
「いや、小原も大人なんだからそれくらい我慢して……はあ、むりか。小原も気が短いので、挑発を受け流せないんでしょうね」
二人して重いため息をつきながらステージに上がりチェックをする。
うん、ここは問題ない。
あとはどうやって悠さんをステージに……できれば機嫌よく、立たせるか、だ。
皆目見当もつかない。
「我々がどうにか頑張って説得するしかないですね」
「ですね。はあぁ、申し訳ないですが、なんとかして乗りきりましょう」
山野さんと別れて、楽屋に戻る。
が、しかし……ドアが、開かない。
どうやら中から鍵を掛けられている。悠さんの仕業だ。
ため息が止まらない。俺はその辺にいた会場スタッフを捕まえて、楽屋の鍵を借りた。
鍵を開けて、楽屋に入る。
「――ほら、颯人さんきたじゃん、放し――!!」
ソファに悠さんがこちらを向いて腰かけている。
膝の上には嫌がる三ツ橋さんを抱いて……いや、力ずくで押さえつけている。
そして、たった今、悠さんは、俺を睨みつけながら、三ツ橋さんに長い長いキスをした。
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