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7-素直になれないよ(3)

――っ!!悠!放してってば!!」 三ツ橋さんが暴れて悠さんの拘束を振り払い立ち上がった。 「何考えてんの馬鹿!」 悠さんに平手打ちをしかけて……すんでのところで思いとどまった。 代わりに思いきり悠さんの左足を踏みつけた。 「いてぇな」 「知らないよ、このおたんこなす!……ねえ、ごめんね颯人さん。悠、何があったか知らないけどやたらと気が立ってるの。怒りで目がくらんでるだけだから、大目に見てやって?ね?」 三ツ橋さんが必死にとりなしてくれている。が、しかし悠さんにはそんな気はなかった。 「大目に見てもらわなくて結構。どうせ颯人は仕事でやってるだけなんだから。愛想が尽きたんならマネージャーを辞めたらいい」 「なに馬鹿なこと言ってんの悠!!颯人さん、お願いだから見捨てないでやって?ね?悠は颯人さんがいないと駄目なんだよ……お願い」 自分でも驚くほど、俺の頭はしんと静まり返っていた。 「大丈夫ですよ、ありがとうございます。三ツ橋さん。愛想は尽きましたけど、仕事はしますから」 「ほら駄目じゃん悠!愛想尽きたって!!悠も謝って!」 「はっ。なんで俺が謝んなきゃいけねえんだよ」 「ええ、謝っていただかなくて結構です」 そっぽを向いた悠さんと、三ツ橋さんと話す俺と、困り切った三ツ橋さんと。 重い空気がその場を支配した。 「ねえ悠、お願いだから颯人さんと仲直りしてよぉ……颯人さんと一緒にいる時の悠、すごくいい感じだったんだよ?」 振り返って三ツ橋さんは俺の手を取った。 「颯人さんもお願い、悠が気まぐれなの知ってるでしょ?今だけ、ちょっと拗ねてるだけ、だから、許してもらえない?」 俺は、口許だけの笑顔で三ツ橋さんに応えた。 「だめ?だめなの……?僕また三人でスイーツ食べに行きたいよぉ……。あんなに楽しかったのに……」 三ツ橋さんは大きな目を潤ませて、今にも泣きだしそうだ。 巻き込んでしまった三ツ橋さんには申し訳ないが、ちょっと拗ねてるだけ、では済まない問題になってしまった。 そもそも、俺が悠さんと私的な関係を結んだのが、事を余計に拗らせている。 あんな感情、間違っていたんだ。俺が悠さんと、だなんて。 ここらで恋愛ごっこを終わらせるのもいいかもしれない。 そう思って俺が訣別のために口を開こうとしたその時、楽屋のドアが遠慮がちにノックされた。

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