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7-素直になれないよ(4)

悠さんの楽屋を訪ねてきたのは、意外にも三浦さんと山野さんだった。 開演三十分前にして、そこからは怒涛の展開を見せた。 まず、三浦さんが悠さんに頭を下げた。 俺には解らなかったけれど、過去に三浦さんと悠さんで感情の行き違いがあり、それから三浦さんが悠さんに嫌がらせをするようになったらしい。 続けているうちに当初の感情は薄れたが、悠さんへの敵意だけが残り、嫌がらせはエスカレートした。 なぜ土壇場になって三浦さんが謝罪するに至ったのか。 それは、今回のコンサートの主宰が三浦さんの身内で、この騒動を聞きつけて一喝したらしい。 三浦さんに謝罪されれば、悠さんとしては特に問題はなくなる。 少々呆気にとられながらも悠さんは謝罪を受け入れ、となれば、急いで開演時間までに諸々の準備を済ませなければならない。 三ツ橋さんがフル稼働してスタイリングを仕上げ、悠さんは何事もなかったかのようにステージへ出て行った。 ……。 残ったのは悠さんと俺の確執だけ。 あっという間にイベントが終わり、機嫌を直した悠さんが戻ってきた。 俺は悠さんにどう接したらいいのか。 一度揺らいだ気持ちはもうもとには戻らない。 「おーし、終わった終わった!さっさと帰るぞ颯人」 駐車場で、上機嫌の悠さんは俺の背中を軽く叩いた。 「あの、悠さん」 「うん?」 「別れましょう」 呆気にとられた顔をする悠さん。 「は、なんで。あ、さっきのキスは謝る。すまん。馬鹿なことしたって思ってる。本当にごめん。もちろん大和と浮気なんかも一切してないからな?」 真摯な顔で悠さんは謝るが、俺の目蓋の裏には、キスをしながら俺を睨んだあの目が焼きついて消えない。 「仕事は続けます。でも、もう駄目なんです」 「へ?……颯人?」 「ごめんなさい」 俺はそれだけ言って運転席に乗り込んだ。 慌てて悠さんも助手席に座る。 「今日の俺は全面的に悪かったって反省してる。自分勝手で周りが見えてなかった。他にも何か駄目なところがあるなら教えてくれ、直すから」 車が悠さんの家に着くまで、悠さんはずっと俺を思いとどまらせようと説得を続けた。 「愛想、尽きちまったのか?」 目的地に着き車を止めた。 「……そもそも私が悠さんと付き合っていたこと自体がおかしかったんです」 「そんなことねぇよ!大和も言ってたろ?!俺は颯人がいねぇと駄目なんだよ!」 悠さんは俺の手を掴んだ。 「大丈夫です。仕事は続けますから」 「俺はそれだけじゃ嫌なんだよ!さっきは頭に血が上って酷いこと言ったけど、俺は颯人が好きなんだよ!この先ずっと好きな自信だってある。なあ、頼むから赦して、思い直してくれ」 「ごめんなさい」 「……じゃあ、俺はどうしたらいいんだよ。颯人を好きな俺はこれからどうすればいいんだよ!!」 俺はその問いの答えは持っていなかった。 曖昧に微笑んで逃げた。 悠さんはずいぶん長いこと俺の手を握って、放してくれなかった。 まるで、この手を離したら俺がどこかに消えてしまうとでも、思っているようだった。

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