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8-なつのおもいで(2)

後から山岡さんが全員に発信したメールには、合宿の詳細が記載されていた。 海岸近くにあるコテージに泊まるらしい。 部屋割は、所長・近江さんの女子グループ、山岡さん・俺のマネージャーグループ、悠さん・桧山さん・二宮さんのアーティストグループに分けられた。 てっきり俺は、仲直りさせるべく悠さんと同室にされると思っていたから、これは予想外だった。 近江さんがわくわくしている。 「あの、山岡さん!当然海入れますよね!!」 「入れるよー。泳げるよー。海入りたい奴は水着持ってきてなー」 「やったー!!私去年水着買ったんですけど、風邪ひいちゃって結局まだ着てないんですよぉ。今日からダイエット始めます!」 「理沙ちんそのままでも十分じゃね?」 「だめです!まだ改善の余地があるんです!」 「女の子は大変やのー」 のほほんと二人が会話している横で、俺は今回どう立ち回るべきか考えていた。 当然悠さんは仲直りを図ってくるだろう。そしておそらく山岡さんは悠さんの味方だ。 俺はまだ仲直りする気はない。となれば、二人をなるべく避けるようにするべき、か。 はぁぁ。 やっかいなことになった。 そもそも、俺ごときが悠さんを好きになったことが間違いだったんだろう。 できることならタイムスリップでもして、悠さんの誘いを受けるところからやり直したい。 あの、光と一緒に悠さんの家に泊まった夜。あの夜に戻って、俺の口を塞ぎたい。 「なあおい、悠。何かお勧めの日焼け止めない?今まで使ってたのが今年は売ってないんだよ。お前庭いじりの日焼け防止に色々買ってたよな」 桧山さんが応接スペースにいる悠さんに声をかけている。 悠さんがソファから起き上がって俺の向かいの席に座った。 「ウォータープルーフ?」 「もちろん」 「肌に合うならコレ最強。肌荒れしやすいなら、塗り直し必須だけどこっちお勧め」 携帯の画面を見せながら悠さんが言う。 山岡さんが口を挟んだ。 「なんだよお前ら。むさい男が顔つき合わせてガールズトークしやがって」 「だって良太、俺のイメージとして日焼けは厳禁だろ」 桧山さんが言う。確かに、桧山さんの黒髪には日焼け肌よりまっさらしっとりの白肌が似合う。 「ん、あ、まあ、な。頑張れ吹雪」 「おい他人事じゃないんだぞ。協力してくれよ」 悠さんが俺を見る。 「颯人も日焼けしたくない派だろ?どうすんだよ」 やむを得ず俺は素っ気なく答えた。 「私はラッシュガード着ます。一応顔と足は日焼け止め塗りますけど、焼けちゃったら諦めます。特に足なんか他人に見せることないので」 「そんなもん?日焼けしてる颯人って想像できないな」 悠さんは一瞬視線を泳がせて笑いながらそう言った。

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