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8-なつのおもいで(4)
海岸から程近いところにそのコテージはちんまりと並んでいた。
「かわいー!おもちゃの家みたいですねぇ。えーと、こっちの赤い屋根が私たちの部屋ですね!」
近江さんが歓声を上げている。
四、五軒並んだコテージは、屋根の色がそれぞれ違う。
青い屋根が俺たちで、緑の屋根が悠さんたちが泊まるコテージだ。
「さっきも言ったけど、昼飯は海の家で、晩飯は六時からバーベキューな」
鍵をチャラチャラと鳴らしながら山岡さんが言う。
道中でバーベキュー用の食材とドリンクは買ってきた。
道具は宿が貸してくれるらしい。
「おい、吹雪、鍵」
山岡さんは桧山さんに鍵を投げ渡した。
「じゃあ、各自遊ぶ準備ができたら、海の家に集合な!」
「へーい」
「了解」
コテージに向かいながら、悠さんが桧山さんに話しかけているのが聞こえた。
「なあおい吹雪、起きたら口の中がめちゃくちゃ甘ぇんだけど。俺が寝てる間になんかしたろ」
「いやいや。おやつなんて食わしてないぜ」
「おやつ?!何」
「細くて長くてチョコついてるやつ」
「長い……?○ッキーか!くそ、どうせ良太だろ?後で……」
屋内に入って、悠さんの声は聞こえなくなった。
コテージは、大人二人が寝泊まりするには十分過ぎる広さがあった。
屋根のポップさに比べて、落ち着いた雰囲気の内装だ。
部屋の奥には間仕切りの陰にダブルベッドが二つ並べられている。
「颯人どっちのベッド使う?」
「左にします」
「じゃあ俺こっちな」
手荷物をベッドの足元に置いて、山岡さんはベッドに寝ころんだ。
「颯人も運転お疲れなー。悪いな、運転させる予定じゃなかったのに。まさか理沙ちんがスピード狂だとは思わなかったわ」
「飛ばす人の車に乗ったの初めてだったんですけど、怖かったですね。命が縮むっていうのを初めて体験しました」
「アクセル全開だったもんなー」
山岡さんが腕枕でしみじみと頷く。
「颯人はもう水着で行くか?」
「はい。泳ぐつもりではないですけど、暑いので」
「じゃあ俺も着替えよっと」
しばらくして海の家に集まった面々は、遊ぶ気満々の装いだった。
「なんだよ、皆やる気じゃねぇか」
「せっかくの海!ですもん。楽しみますよぉ」
そう言う近江さんはビキニの水着に羽織りものをしている。
所長もパーカーを着ているので分かりにくいが、露出部分を見るに恐らく水着のようだ。
思わぬ脚線美に男どもが一瞬見惚れた。
「……おい、飯!さっさと飯食って海入るぞ!」
見惚れなかった悠さんが手を叩いて、皆を正気に返した。
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