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8-なつのおもいで(11)*
気持ちよくない。
気持ちよくない。
気持ちよくなんかない。
左右両側から耳や喉、肩や指先を甘噛みして舌でなぞられながら、とろけそうなほど後孔から体内を愛撫されて、つま先から腐り落ちそうな感覚に襲われる。
「は、ぁっ」
処理しきれない悦楽を吐息に紛れさせて吐き出す。
無理やり犯されるなら、痛いだけの方が千倍マシだ。
こんなの、屈辱以外の何物でもない。
「ふ、ぁぁあっ、嫌っ、やめぇっ!」
ろくに回らぬ口でささやかな反抗をするたびに、両脇の二人がにやにやと嗤う。
「ん、は、ぁあっ!」
涙と一緒にまた精液を吐き出す。
俺の性器は指も触れていないのに、さっきから体液を溢れさせている。
「なあサキ、俺先やっていい?」
「ああ」
ようやく二人が離れて、全身から力が抜けた。
俺は脚を開いたままぐったりとうつむくように倒れかけて、長髪の男に抱き止められる。
「ねえさん、まだ寝るには早いぜ。俺たちも気持ちよくなってから、な?」
優しく言い聞かせるようなその声音に、危うく頷きそうになった。
「よし、いーぜー。頼むわサキ」
「力仕事は全部俺かよ」
「だってサキの方が俺よか力あるじゃん。ほら、早く」
遠くに二人の会話を聞いたと思ったら、脚を開いたままふわりと抱え上げられた。
くるりと百八十度後ろを向かされて、胡坐をかいて待っている赤髪の男の膝の上――否、屹立した性器の上に下される。
「い、嫌、やめろ」
さっきまで嫌というほど拡張されていた後孔にひたりと性器の先端が触れ、俺は反射的に地面に膝をついて挿入を拒んだ。
「だめだよおねえさん。今度は俺たちが気持ちよくなる番だろ?」
ほら、と赤髪の男が腰を突き上げると、ぬぷりと遠慮なく男性器が体内を侵した。
「う、ぁ、あ」
膝が震える。
「んー。このへんだっけ?」
一度引いてから、再度腰を勢いよく突き上げる。
「っは、んん!」
先端が前立腺を遠慮なく抉る。
吹き上がる快楽に脚の力が抜け、ずるずると膝が滑っていく。
「もう座っちゃいなよ。ね?そのほうが楽だよ?」
赤髪の男が唆すまでもなく、俺の意志に反して、俺の体は悦楽に屈した。
ゆっくりと腰がおちていって、赤髪の男のモノを飲み込む。
散々馴らされた俺の後孔は容易にその熱塊を受け入れた。
「は、ん、ちが、ちがう、そんなつもりじゃ、っんんっ」
ああ、我ながら情けない。
どうしても否定の言葉に無意味な喘ぎ声が混ざる。
「違わないよ、おねえさん。それでいい。ほら、俺に掴まって。……そう、上手だねおねえさん」
促されるままに赤髪の男の肩に両手でしがみつく。
もちろんそんなことはしたくないのだが、不甲斐ない俺の体は、どこかに掴まっていないと崩れ落ちそうなほどぐずぐずになっていた。
赤髪の男が腰を突き上げる度、俺の体は跳ねて快楽にもがく。
「あ、っは、ぃやだっっ、ぁああっ」
「ふふ。すっげ気持ちいい」
鮮やかに赤い髪と、にやりと嗤った口元が真っ白な視界に焼き付いた。
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