116 / 138

8-YAMATO's Bar

「うー……。はぁぁぁああ……」 海から帰った俺は、自宅マンションのベッドでぐったり突っ伏していた。 「ちょっとさぁ、ただでさえ蒸し蒸ししてうんざりしてるのに、じっとりため息つくのやめてくんない?」 鬱陶しいんだけど、とソーダのペットボトルを傾けながら大和が冷たい目で俺を見る。 「しょうがねぇだろ……俺だって落ち込むんだよ……」 「もういいじゃん。悠は充分頑張った。ね?恋愛は必ずいつか……終わりが……来るんだよ……。……もう!悠の馬鹿!僕まで泣きたくなってきちゃったじゃんか」 大和が俺につられて涙がにじんだ顔を両手で覆い隠した。 「えぇ?なんだよ、俺が泣かしたみたいじゃねぇか」 俺は起き上がってベッドに座ると、大和を膝の上に抱き上げた。 「みたいじゃなくて、泣かしたの!僕だって失恋したばっかなんだからね!」 「そうなのか?何があったんだよ」 つやつやの大和の髪に頬を寄せると、甘いいい香りがする。 そのまましばらく大和の頭を撫でていると、大和が湿っぽい声を出した。 「付き合って一ヶ月で浮気されるってどう思う?酷くない?それなら最初っから付き合わなきゃよかったよぉ……」 「んー。そうだな」 「普通だったらさ、だいたい初めの一ヶ月くらいはラブラブで幸せじゃん?僕今どん底だよ……」 「そっか……」 大和が俺の胸にもたれ掛かる。 「こう言っちゃなんだけど、大和、結構男運ないよな。こんなに可愛いのに。この間も二股かけられてたんだろ?」 「言わないでよぉ、忘れようとしてるんだから」 「あ、悪ぃ」 大きな目にぶわっと涙を溜めたのを見て、俺は慌てて大和を抱きしめた。 「でもさ、終わりのない恋愛だってあると思うんだよ。俺は。少なくとも俺は颯人とのことは終わりにする気はさらさらねぇからな。大和だって、そういう奴にいつか逢えるって。そう思うよ」 ふと心に浮かんだ言葉をそのまま声に出したら、大和が泣いた。 「悠ー!なんで急にかっこいいこと言うのさ!僕が惚れたらどうすんの!!」 「それは困る」 「じゃあかっこよくならないでよ!僕だって、悠と颯人さんのことは応援してるんだからね……ぐすっ」 大和が鼻を啜る。俺は手をのばしてティッシュを取って大和に渡した。 「あり”がと」 鼻声で礼を言うと、大和は涙と鼻水を拭った。 「僕も応援してるし、山岡さんも応援してると思うよ。なんだかんだ言っても、悠、颯人さんと付き合うようになってから、人が変わったっていうか、周りから愛されるようになったよね。なんかさ、ワガママで俺様なのは変わらないんだけど、どっか憎めない感じ」 「良太が応援?まさかぁ」 「ホントだよ。今回山岡さん、颯人さんと同室だったんでしょ?夜寝る前に悠のこと言ったら、颯人さん泣いてたって」 「え、え、え、まじかよ……良太何言ったんだ?つか何俺の颯人泣かしてるんだよあいつ」 「ふふ。詳しくは聞いてないけど、颯人さんと悠がまた仲良くなったら良いなって感じのことを話したって」 おいおいおい、急に希望が見えてきたじゃねぇか。 そういえば、二次会の時偶然手が重なっちゃった時も、振り払われなかったし。 なんなら、我慢できなくて俺がちょっと指撫でても、颯人嫌がらなかったし。 そろそろ少しは俺のこと赦す気になってくれた……のか? 「悠、颯人さんと仲直りして、終わりのない恋愛がホントにあるってこと僕に見せてよ」 「そうだな。見せてやるよ。待ってろ」 「う”う”、また急にかっこよくならないでよぉ」 額にキスしてやったら、堰き止められていた水が溢れ出したように、大和はわっと泣き出した。

ともだちにシェアしよう!