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9-スキ、キライ、スキ(7)

ようやく救急車が来て、俺は悠さんの付き添いとして同乗した。 てきぱきと応急処置を施す救急隊員を見つめ、血に濡れた悠さんの手を握っていることしかできなかったけれど。 こんなに自分の無力さを呪ったことはない。 病院について、救急隊員がストレッチャーを動かすべく移動した。 「すみません、外出るんで手、放してください」 俺が掴んでいる悠さんの手を指して救急隊員に言われた。 俺とて、邪魔だろうから放したいのだが……。 「あの、掴まれてて放せないんです」 無意識なんだろうが、悠さんが俺の手を強い力で握りしめている。 「え!あ、そうですか……ん、こりゃすごい力だな……」 悠さんの指をこじ開けてもらって、ようやく手が離れた。 手が離れた後はあっという間に病院に運び込まれ、悠さんの姿は白い扉の向こうに消えてしまった。 俺は近くにあったソファに倒れるように腰かけて、しばし放心した。 突然携帯が震えだして飛び上がる。 近くに見えた通話可能なエリアまで行って、通話ボタンを押した。 手が震えていて携帯を支えているのが辛い。 所長からの電話だ。 「越野くん?!悠のことは聞いたけど、今どこにいるの?病院?」 「はい、悠さんに付き添って今病院です。治療中なので、まだ詳しい状況は分からないんですが……」 「そう……命に別状がないことを祈ってるしかないわね。悠のご両親にも連絡したから、そのうち見えると思うわ。悪いけど応対お願いね」 「はい」 「じゃあ、何か変わりがあったら連絡もらえるかしら。よろしくね」 「はい。失礼します」 通話を切って、ようやく手の震えが止まっていることに気が付いた。 所長の声を聴いて少し緊張が解けたのだろうか。 さっきのソファの方が、悠さんが運び込まれた集中治療室の様子が窺いやすいので、ソファに戻る。 腰を下ろして、手を組んでは離し、手が血で固まってごわごわしていることに今更気がついて、手洗いを借りて水で洗い流した。 遠くからぱたぱたスニーカーで駆けてくる靴音がして、廊下に顔を出すと、見知った二人が今にも泣きだしそうな顔で駆け寄ってきた。 「「あ!越野さん!悠は?!悠は?!」」 悠さんの弟、双子の創くんと幸くんだ。 ユニゾンですがりつかれて、俺は思わずあやすように二人の頭を優しく撫でた。 「まだ治療してもらってるところです。大丈夫、すぐに終わりますよ」 「ほんと?!悠大丈夫?大丈夫?」 俺は黙って宥めるように二人の髪を撫で続けた。

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