130 / 138
9-YAMATO's Bar
「うぇーい!!」
意味不明に歓声を上げて、紅茶で乾杯。
大和のとこのリビングで、お菓子をつまみながら四人でのんびりお茶会を始めた。
お茶会っつーか、テーブルに並んでるのが紅茶とお菓子ってだけで、ノリは飲み会だけどな。
大和と良太が目の前でフィナンシェを半分こして食べてる。
「ん!美味いなコレ!見た目地味なのにやるじゃねぇか」
「そうなの!美味しいの!僕このintのフィナンシェがきっかけでスイーツ食べ歩きが趣味になったんだよ!」
ん?颯人?
もちろんいるぜ。俺の膝の上に。
「……」
無言だから分からないと思うけど大丈夫、いるから。
俺の腕の中にいるから。もう二度と離さねぇから。
「おい悠、そろそろ颯人顔色やばいんじゃねぇか。脳溢血とかイっちゃわないか?」
「馬鹿言うな良太、颯人はちょっと照れてるだけだ。な、颯人?」
俯き加減の颯人の顔を覗き込む。
ほっぺを赤くリンゴみたいに染めて、涙目でクルミのクッキーをかじってる。小さなお口で。
くっ……!可愛い……!
時々、俺の方をキッと睨むのも、胸のあたりがきゅんとするほど愛おしい。
ん?何言ってんだ、胸がきゅんとするのは断じて颯人に睨まれてビビってるわけじゃねぇ。ときめきだ、ときめき。
ほら、額にキスしてやろ。
「悠さん……?」
「どした颯人。もう一枚クッキー食うか?」
クッキーが積まれた皿に手を伸ばそうとしたら、その手を掴まれた。
なんだよ、手を繋ぎたかったらそう言えよ。
いくらでも繋いでやるのに。
「いででででっ。颯人、その関節そっち曲がんねえから。反対、反対だからっ」
掴まれてそのまま指の関節極められて激痛が走る。
しょうがねぇなー。颯人は恥ずかしがりだから。
でもバイオレンスな方法で愛情表現するのはどうかと思うぞ?
まあ余すところなく全部受け止めるけど。俺が。すべて。
「……なんで私だけ、悠さんの膝の上に座らされてるんですか……?」
「ん。俺がそうしたいから。ぎゅってしたいから」
不服そうな颯人だが、気にせず抱きしめる。
夏に入る前に颯人を怒らしちまったから、こうやって抱きしめるのも久しぶりだ。
そりゃ、いちゃいちゃもしたくなるっての。
「ご存知ですか?このメンバー、私が飛び抜けて最年長なんですよ……?あまつさえ悠さん十歳年下なのに。何ですか、この待遇」
「特別待遇だろ?俺様の膝の上だぞ?これ以上があるかっての」
「私は普通に床の上がいいです」
「だァめ。床の上だと冷えるだろ?」
「私が冷えることになにか不都合があるんですか?」
「かわいそうだろ。ここなら颯人も冷えないし、俺も満足だし。ほら、皆ハッピーだ」
「冷えても構わないので床の上がいいです」
「颯人が床の上座ったら、俺が颯人の膝に座んのか?ちょっと厳しくねぇか、体格的に」
想像するに、ちょっと窮屈そうだ。
「悠さんも床に座ってください」
「?難しいこと言ってくれるな、颯人。自慢じゃねぇが俺の頭はそんなに良くねぇんだ。颯人が床に座る。それで俺も床に座るってのか?不可能じゃね?」
大和が冷めた目で俺を見る。
「べったべただね、悠。颯人さんに同情するな」
颯人が助けを求めた。
「三ッ橋さん、この馬鹿から助けてください」
「えー。うーん……でも僕、悠がすっごい落ち込んでるのも見ちゃったからなぁ……颯人さんファイト!」
「じゃ、じゃあ山岡さん!」
「すまん。右に同じ」
颯人が孤立無援であることを悟ってむくれる。
だから、その、むー……っての可愛いんだって。
もっかいキスしてやろ。
…………キスだけじゃ足んねぇなぁ。
「さて!茶も飲み終わったし、お開きにするか?」
良太が空気を読んで切り出した。良太もたまには気が利くじゃねぇか。
「悠、ほどほどにねー。がっつきすぎも嫌われるよぉ」
「おう、任せろ」
俺は颯人と一緒に隣の俺の部屋に帰った。
こっから先は俺と颯人だけのオハナシだから、ここでさよなら、な?
じゃ、またあとでな!
ともだちにシェアしよう!