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10-大団円(3)
「永久保存だな」
なんて呟きながら悠さんが携帯で料理の写真を撮っている。
はあ……。仲直りしてから、悠さんの糖度が増した。
前を生クリームだとしたら、その上にメープルシロップをかけたように、甘々になった。
ん?!
オムレツの開きの写真を撮るのはいいが、撮り終わって一瞬チラッと見えたホーム画面の壁紙はなんだ。
「悠さん、ちょっと携帯見せてください」
「やだ」
「なんか気になるものが見えたんですけど」
「壁紙に颯人とのツーショット設定してるよ。渡したら絶対消すだろ颯人。俺の宝物なんだから、絶対消させねぇ」
ごまかしても無駄だと思ったのか、悠さんはあっさりと白状した。
「いつそんなの撮ったんですか。私悠さんとツーショットなんて撮った記憶ないんですけど」
「え、あー……うん。ずっと前だよ」
悠さんは視線を泳がせながら曖昧なことを言う。
「ずっと前?いつですか?」
「うー、その、二人で旅行したじゃん」
「ああ……?写真なんて撮ってないですよね?」
「撮ったぜ。忘れてるだけだろ」
悠さんが俺を見ようとしない。怪しい。
消すかどうかは別として、なんとかしてその写真を見たい。気になる。
「写真見たいです。悠さん。見せてください」
精一杯おねだりしてみた。
キスする時みたいにまっすぐに、悠さんの瞳だけを見つめる。
瞳から心の中を覗くように。
ほら、もう悠さんは俺から目が離せなくなった。
「だ、ダメだ。颯人には見せられない」
「消さないです。見せてくれるだけでいいです」
ただひたすらに悠さんを見つめる。
やがて悠さんが降参した。
「う、うぅ、見るだけだぞ?文句言うのもなしだからな?」
「分かりましたから、早く見せてください」
「ちょっとだけな」
そう言って見せてくれた画面に写っている二人を見て……、俺は、ポン、と音がしそうな勢いで顔が赤くなった。
「はい、おしまい。いい写真だろ?颯人がずっと怒ってた時も、俺はこの写真見て頑張ってたんだからな」
悠さんがそそくさと携帯をポケットにしまう。
俺は赤い顔のままうつむいて、悠さんの左手を両手で軽く握った。
「な、なんだよ颯人」
「その写真……私にも、ください」
「おう、もちろん!なんだよ、颯人も気に入ったか?」
俺の携帯が写真を受信するとともに、悠さんは笑顔で背中から俺を抱きしめた。
温かな頬が重なる。
壁紙にはしないけど、画像は大事に保存した。
一泊二日のお泊りデート。
そう、確かに、あの時俺は寝てた。
往きに高速を下りてから、海の方へむかう途中、俺はちょっと居眠りしてて、起きたら悠さんが意味ありげに笑ってた。
この写真撮ってたんだな。
もう一度だけ写真を開く。
微かに口許に笑みを浮かべながら気持ちよさそうに眠ってる俺と、その俺の頬にキスをしながら幸せそうに笑うカメラ目線の悠さん。
悠さんの笑顔が眩しくて、写真を見てる俺も思わず笑顔になる。
「私も宝物にします」
「はは。そっか」
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