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第8話

「初めて、心奪われたのですよ。あなたに。ただの奴隷にすぎないはずの、愚かしい人間に対して、初めて心奪われたのです」  そう。自分以外の存在は、無力な奴隷。  私の意のままに動き、踊り、その果てに死ぬ、ただの傀儡。  それが、初めてこのウァラウムの心を動かした。  その美貌で、その闘志で、その気高さでもって、心臓をわし掴んだ。 「本当に……小癪な花一輪……小癪な私のアルトニー……」  しかし、その一輪の花・毒一滴が、ウァラウムの心を狂わせた。  死にゆく定めを持つ人間を、刹那のひととき引き留めようという暴挙に誘った。 「アストラル・ボディと言えども、感じるはずです。アルトニー、私と最後の思い出を作りましょう」 「なッ!」  両の頬を大きな掌で挟まれ、アルトニーは身動きとれぬままウァラウムと口づけていた。  思わず、硬く唇を結ぶアルトニー。  だがウァラウムは構わずその上から舌で舐め、唇で食み、歯を立てた。  彼の唾液がアルトニーの顎をつたい、流れてゆく。

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