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第一章・3

 明は、美しいものが嫌いだった。  散々悪さをした故郷を本格的に追われることになった原因は、金色の穂を揺らす麦畑に火をかけて全焼させたことにあった。  波打つ金色の穂の美しさが、明には許せなかったのだ。  だが、その候補生の美しさには不思議と嫌悪を抱かなかった。  それどころか、胸が締め付けられるような気分にさえなった。  こんな感情は生まれて初めてだ。  運命という言葉も明は嫌いだったが、他に思いつかなかった。  明はその後、この不思議な魅力を持った候補生からすっかり目が離せなくなっていた。  いつまでも見ていたい、とそんな気分にさえなったが、さすがに校長も話が長かったと反省したのか、それからほどなく訓示は終わった。  後は教官によって大魔闘士の紹介がおこなわれ、開会の儀は予定通り締めくくられた。  普段の明ならば、ここで今日のお仕事は終わり、とばかりにさっさと闘技場を後にするのだが、今回は例の候補生が気になった。  どの程度の実力か、見てみたい。  名前くらい知っておいても、損はないだろう。

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