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第一章・4

「おっ。珍しいねぇ、左近充が観戦するなんて」  人に紛れて席についていると、少年Aが声をかけてきた。  むろん、本名が少年Aなわけがない。  名前を覚えるのが面倒な明が、そう呼んでいるだけだ。  Aだけでなく、B、C、D……と、学校内でいつもつるんでいる全員が顔を揃えていた。  明の取り巻き、と他の人間からは思われている、蟹座を第一位の守護星座に持つ連中だった。  明はこの少年たちと悪さをすることはあったが、ただの一度も仲間と思ったことはなかった。  いつかは自分を蹴落とし、蟹座の大魔闘士になるつもりでいるに違いない、と踏んでいた。  返事をするのも面倒なので黙っていたら、少年たちは断りもなく明の周りに陣取った。  少年たちにとっては、明は格好の頭なのだ。  虎の威を借る狐を地で行くような行いをしばしば起こしては、人々の眉をひそめさせていた。  案の定、闘技が始まると少年たちは戦う候補生たちをヤジり飛ばし、下品に笑い合った。  時折明にも同意を求めるように話しかけてきたが、そのたびに彼の機嫌は悪くなっていった。

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