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第一章・5
「おっ! 次だぜ、例の貧血ちゃんは!」
Aの言葉に、少年たちは今までで一番大きな声で笑った。
「名前、何ていうんだよ?」
「え~っと、待てよ」
Aは、プログラムを指でなぞって素っ頓狂な声をあげた。
「岬 愛(みさき まな)、だってよ!?」
少年たちは、再びどっと笑った。
「男の魔闘士が、女の子みたいな名前だってぇ?」
「おいおい、いいのかよ。そんな弱そうな名前で」
口々に揶揄する少年たちのおしゃべりも、明にはどうでもいいことだった。
(愛、か)
心の中で、そうつぶやくと明は身を乗り出し、愛の対戦相手を確認した。
中肉中背だが、筋肉はそうとう鍛えられている。
ごりごり押してくるファイター型とみえた。
かたや愛の方はと言うと、鍛える以前にちゃんと食べているのかと疑うくらい細い。
色は抜けるように白く、この場にいること自体何かの間違いなんじゃないかと思えてくる。
(こいつ、大丈夫なのか?)
他人を心配するなんて、まったく自分らしくない。
オレはいったいどうしちまったんだ、と自問自答する間もなく、闘技は始まった。
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