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第一章・6
冷静に実力を測るつもりが、明は愛の動きにすっかり見とれていた。
一分の無駄もなく、相手の拳を、蹴りを、愛は紙一重でかわす。
その流麗な動きは、まるで優雅なダンスをみているかのようだった。
かと思えば、相手が拳を振り切った後の一瞬の隙をついて蹴りを入れる。
そのポイントも、鼻やあごなど急所を的確に突いてくるのだ。
だが、と明は唸った。
(攻撃が軽いな)
急所を突かれて、相手の動きが鈍るしばらくの間は絶好のKOチャンスである。
愛はラッシュをかけるが、なかなか簡単には倒れてもらえない。
そのうち、愛は肩で息をし始めていた。
(スタミナも足りねえか)
魔闘士の戦いは、拳や蹴りなどの格闘技に加えて魔力を使う。
拳が相手にヒットする瞬間に、魔力を上乗せするのだ。
遠距離から波動を飛ばす魔法や、打撃だけの格闘技と違い、相手に魔力をダイレクトに注ぎ込める。
もちろん、打撃分のダメージも加わり効果は抜群だ。
愛は、候補生にしてはその魔力に秀でている。
急所を的確に打ってくるクレバーさも、見事だ。
だが、残念ながらその拳が軽かった。
もっと体を作って、腰の入った攻撃ができれば、相手はすでに倒れているはずだ。
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