7 / 259

第一章・7

 残り時間が終わりに近づいてきた。  このまま引き分けか、判定か、と衆人が考え出したその時である。  焦れた相手が、愛の髪をつかんで地面に叩き付けた。  そのまま馬乗りにされ、なすすべもなく殴られ続けるところで時間が来た。 (そしてダーティな攻撃に弱い、と)    判定は引き分け、ということで愛の魔導学校での初戦は終了した。  途端に、明の耳に下卑た声色のヤジが飛び込んできた。 「はい! 残念でした~ッ!」 「キレイなお顔が腫れあがっちゃうところだったね!」  周囲に座っていた少年たちだった。  遠巻きに見る人間の目が白いところを見ると、ヤジは試合中も続いていたらしい。  集中していた明の耳には届かなかったが。    やれやれ、と席を立つ明の腕を、少年Bがつかんでもう一度座らせた。  背中をかがめて、耳元に口を持ってきたBの息は臭く、不快だった。  不快な息が、不快な言葉をつむぎだす。 「なぁ、あのカワイコちゃん、ちょっとからかってやらねえか?」  その言葉を待っていたかのように、周りの少年たちがくすくすと笑いだした。  こういうことは、明も大好きなはずだ。  だが、明はむっとした表情のまま返事もせずに立ち上がった。  意外な展開に、少年たちはひそひそとささやき、ぶつぶつと不平をこぼした。  

ともだちにシェアしよう!