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第一章・7
残り時間が終わりに近づいてきた。
このまま引き分けか、判定か、と衆人が考え出したその時である。
焦れた相手が、愛の髪をつかんで地面に叩き付けた。
そのまま馬乗りにされ、なすすべもなく殴られ続けるところで時間が来た。
(そしてダーティな攻撃に弱い、と)
判定は引き分け、ということで愛の魔導学校での初戦は終了した。
途端に、明の耳に下卑た声色のヤジが飛び込んできた。
「はい! 残念でした~ッ!」
「キレイなお顔が腫れあがっちゃうところだったね!」
周囲に座っていた少年たちだった。
遠巻きに見る人間の目が白いところを見ると、ヤジは試合中も続いていたらしい。
集中していた明の耳には届かなかったが。
やれやれ、と席を立つ明の腕を、少年Bがつかんでもう一度座らせた。
背中をかがめて、耳元に口を持ってきたBの息は臭く、不快だった。
不快な息が、不快な言葉をつむぎだす。
「なぁ、あのカワイコちゃん、ちょっとからかってやらねえか?」
その言葉を待っていたかのように、周りの少年たちがくすくすと笑いだした。
こういうことは、明も大好きなはずだ。
だが、明はむっとした表情のまま返事もせずに立ち上がった。
意外な展開に、少年たちはひそひそとささやき、ぶつぶつと不平をこぼした。
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