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第一章・8

 そのまま観衆席を後にした明は、愛の姿を探してみた。  探し出すのにさほど苦労はいらなかった。  どんな人込みの中でも、愛は際立って輝いていた。  周りにいるのは一人の大人。指導教官の魔装束を身に着けている。  それから、愛よりやや年上の少年が数名。  どうやら師匠と兄弟子達のようだった。  闘技場で話しかけることはできなさそうだ。  ならば、と明は思いを巡らせた。  この後の休憩時間に捕まえるか、それとも夕食の時間に食堂で。  何から話そうか。  まずは自己紹介か? それから試合の感想とか。  頬を指でつつきながら、ふらりふらりと闘技場から出ていく明は、蟹座予備生の少年たちが笑いあいながら愛の方を見張っていることに気付かなかった。

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