13 / 259

第一章・13

 まさかてめえら、と明は、一番近くにいた少年Aの襟首を絞り上げた。  Aは大げさにばたばたと手を振り回し、他の少年たちはげらげら笑いながら明をなだめにかかった。 「お前が一抜けたしたんじゃねえか~」 「悪かったよ。今度はお前もちゃんと誘うからよ!」  明は舌打ちすると、思い切りAを少年たちに向かって押しのめした。  派手な音を立てて食器がひっくり返り、食堂は一瞬静まり返った。  もう食事をとる気も失せてしまった明は、椅子を蹴り立てて席を立った。  食堂を後にする背中に、少年たちの含み笑いが届く。  どこまでも、明はひがんでいる、としか思われていないようだった。  しかし、これ以上暴れても逆効果だ。  明の頭に、さっき別れたばかりの愛の顔が浮かんだ。  自分もあの少年たちと同類と思われていたのかもしれない、と考えると癪だった。  腹の虫はなかなか収まらなかった。

ともだちにシェアしよう!