20 / 259

第一章・20

 そんなことはない、と男は愛の頭に広い掌を乗せて撫でた。 「せっかく授かった運命だ。がんばって精進して、大魔闘士を目指しなさい。それから」  男は、書付を愛に手渡した。 「3月10日。これがお前さんの誕生日だ」  愛は、書付を手のひらで包み目を閉じた。  自分が生まれた日。  それが決まっただけで、この地上に初めて足を付けたような気持ちになれた。 「ありがとうございます」  愛は男に礼を言い、そして明の方を向いて、もう一度言った。 「ありがとうございます。左近充様」  愛の涙声に、明は大いに照れた。 「まぁ、こうなることは解かってたけどよ」  よく言うよ、と男が笑う。

ともだちにシェアしよう!